2012年05月14日

母の日

やさしい一日だった。

遠いところで仕事を始めた娘と、
私の側にいる娘から、
母の日のプレゼントが届いた。

地上に広がる夕陽の
オレンジと薄いブルーの
やわらかい光の中でのドライブ。

実家での、私の母を囲んでの
手作りギョウザの夕食。

どんなにつらいことがあっても、
どんなに不本意で許せないことがあっても、
家族が存在することへのありがたさを
素直に受け止めた日。

昔から、こんな形ではなかった私たち家族も、
一人一人が独立し、
一人一人が年を重ね大人になり、
一人一人が成長し、
一人一人がさまざまな過去を越え、
一人一人が許しあい、
一人一人が個々と向き合っていったのだと思う。

美しい一日だった。
家族の重さの意味を感じた。
そう、こんな年になってやっと。

ここ10年、父を許し、母を許し、
父を受け入れ、母を受け入れられた。
小さい頃、両親を嫌いだった中で、
私が、自身のないまま子どもを育て、
そして、子どもが成長し、私を越え始めた今、
やっと、私の過去の人生に対して、
静かに、波の音を目をつぶって聞き入るように、
穏やかな気分で、過去を過去として
思い出せるようになったのだと思う。

私の人生を、もしも、もう一度やり直せるのなら、
私は、昔をもう終わらせたい。
幕を下ろして、抱きしめたい。
これからの時間を、そう過ごしたいと、
本当に思っている。

投稿者 椎名 あつ子 : 17:21

2012年04月16日

SDカード

デジカメが、突然こわれた。
電源を入れても、画面が出てこない。
真っ暗なまま、
また、電源自体が消えてしまう。

もう限界なんだろう。
7年…いや、8年。
月日は早いものなんだね。

私の思い出は、どんなにがんばっても、
画面には出なくなった。
遠く過去のものとなった。

SDカードの中にある私の思い出は、
カメラ屋さんや、パソコンで、
現像して見ようと思えば見えるのだろうけど、
それにしても、こんなに小さな、
うすい、ちっぽけなSDカードにしか、
私の過去が残っていないのかと思うと、
なんか複雑な気分になった。

楽しい思い出、
笑っている顔、
美しい風景、
私の好きなパリ、
そして、あれもこれも…
すべて、遠い昔。
SDカードの中にとどまることとなった。

新しいデジカメは、今はやりの、
タッチパネルにしてみた。
新しいやり方すぎて、まだよく分からない。
だけど、私がこれから撮る様々なシーンは、
ちゃんと、いつでも、画面に現れ、
見ることができるようになる。
なんという安心感なんだろう。

人の心も、タッチパネルで、
ポンとたたくと見えたりすればいいのにね。
そしたら、本当に安心するのにね。

今年、最後の桜も、
新しいカメラの中に取り入れよう。
そしたら、新しい世界が始まる気がしている。

投稿者 椎名 あつ子 : 18:23

2012年04月10日

桜が満開の日曜日。

ブラインドから、やさしい光が
差し込んでいても、
私は、ベッドの中にいると決めて、
ずっと夕方までゴロゴロしていた。
何故か、桜とか、
お天気のいい日曜日とかに惑わされず、
気にせずにいたかった。

私は、本当に疲れていた。
そして、少し哀しくて、沈んでいた。
そんな私を、私は受け止めたかった。

夕方になって、
少し光がまぶしくなくなって、
今の私の心に近付いた頃、
シャワーを浴びて、きれいにお化粧をして、
お気に入りのジーンズとTシャツを着て、
買い物に出かけた。
私のごほうびを買いに。

この1ヶ月、公私共に、
休みなく動いていた。
私はやっぱり疲れていて、少しつらくて、
ひとつの区切りがついたという達成感もあり、
私の誕生石の真珠のネックレスを買った。
少し、誕生日には早いけれど、
ずっと前から欲しかった、
イミテーションだけどきれいな、
長い真珠のネックレス。
その場で包んでもらうこともやめて、
ネックレスをして、
車でどこまでも走った。

桜は、なんて美しいんだろう。
そして、悲しいのだろう。
春は、なんて不思議なんだろう。
人を明るくさせながら、混乱させる。

真珠のネックレスと薄紅色の桜。
夕暮れ時の紫の光。
そして、春の少し冷たい風。

こんなのも、お洒落かも。

私は、こんな日も大切にしたい。
そう思った。
心から。

投稿者 椎名 あつ子 : 13:08

2012年02月29日

雪の日

初春、雪が降り続けた。

冷たい風に吹かれ、
雪は大空に向かって舞っていた。

それはまるで、
おびただしい、たくさんの事を、
美しい白い粉雪は浄化しているようで、
強く、はげしく、洗い流し、
そして落ちてゆく。

春を受け入れるため、
これからのあたたかい風を
むかえるため、
いろんな事を洗い流す。

雪はすべてを知っている。

汚れてしまった悲しみも、
黒いかたまりの恐れも、
ひざを抱えこむような淋しさも、
ズンズンときこえてくる不安も、
すべてすべて
きれに浄化してくれている。

その状況を、静かにだまって
見守ってゆこう。
凍えるのではなく、胸を張って、
受け入れていこう。

やさしい春は、
もうすぐ訪れるから。
大丈夫だから。
あと少し、待ってみよう。

雪はちゃんと見ているから。

みんな、みんな、
一人じゃない。

雪をいろんなことを教えてくれた。
素敵な水曜日。

投稿者 椎名 あつ子 : 14:17

2012年02月14日

親離れ子離れ

4月から、上の娘が新入社員として働き始める。
配属先はまだ分かっていない。
2月下旬頃からの決定となり、
そこから引越しなど、
新しい環境への支度が始まる。

今年に入ってから、
初めてのひとり暮らしの練習として、
料理を教え始めた。
仕事から帰ってきて、簡単に作れる料理を中心に、
メニューを決め、週2~3品のペースで
こなしている。
それぞれの料理に合わせた野菜の切り方、
味付けの感覚など、
料理本を見なくても、
何となくあるもので作れる状況にまで
進めていくことは、
思った以上に、教える側も大変な作業であり、
教わる娘の方もぐったりしてくる。

ただ、作り上げた料理を、

「上手、上手、美味しいよ。大丈夫!」

とほめていくうちに、彼女は、

「お料理って大変だけど、楽しいね」

と、余裕が少し出てきたのか、言っていた。

私は、料理作りが義務感としてではなく、
食の文化としてや、人が生きていくための基本としての
大切さを教えていきたいと思っているし、
また、何よりも料理は、集中力、想像力、
そして人への思いやりの気持ちを
学ぶことにもなると思う。

今まで、ここについては、私自身、日頃、
娘たちに教えてきたつもりではあったが、
いざ、娘が独立するとなると、
何と数多くのことを教えずにきてしまったのか、
母親として、一体今まで何をしてきたのか、
最近、反省の連続だ。

人との接し方は大丈夫だろうか。
仕事をしていく上での礼儀や、
上の人に対する言葉づかいは大丈夫だろうか。
ストレスの切り替えや、また、
上司に怒られたとき、この子は耐えられるか、
前向きに謙虚に受け止められるか、
考え出すときりがない。

娘が親離れをしようとしているのに、
どうも私は、子離れさえもできていない気がしている。

自分が引っ越すのではないのに、
私が焦り始めているという、
何とも親として未熟な状況を感じている。

そんな中、料理を作りながら、
娘がポツリと言った。

「年末の旅行、楽しかったね。
 …何か淋しいな。」

私は涙が出そうになり、
娘を抱きしめたくなる気持ちを抑えた。

「大丈夫よ。いつでも会えるから。」

これが、精一杯の言葉だった。

これからが、親離れ子離れの、
本当の意味での始まりとなる。
春は、本当にもうじきやってくる。

投稿者 椎名 あつ子 : 14:20

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

横浜市中区に開設している女性のための心のカウンセリングルームです。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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