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ギプス

先日、パニックになった飼い猫を助けに入ったところ、
ひどく手を噛まれてしまい、しばらくお休みを頂いていました。
利き手を怪我したので、かなり不自由な体験をしました。

以前には、もっとひどい怪我をしてギプス生活をしたことがあります。
今日はその頃のギプス生活から感じたことを書きたいと思います。

スポーツをしていて足を怪我していまい、
腫れ上がって痛くて歩けないので病院に行ったら、
靭帯が切れて骨が亀裂骨折しているとのことで
すぐにギプスをすることになりました。
突如、自由に動けない生活が始まりました。
ちょっと隣の部屋に物を取りに行くのも一苦労、
お風呂はギプスをビニールで厳重に包んでシャワーのみ、
いつもなら10分で歩けるところでも何倍も時間がかかる、
お酒もだめ、くつはスニーカーしか履けない、自転車にも乗れない、
あまりじっとしていられない私には、大変な事態です。
もちろん、ものすごくイライラします。
なかなか治らないことにあせり、
靭帯は大丈夫なのかと心配でした。
そして、自分でできないことを人に頼むのが申し訳なくて、
いたたまれません。

けれど、このギプス生活は
私にいろいろなことを学ばせてもくれました。

ギプスで歩いていると、知らない人が声をかけてくれるのです。
通りすがりのおばあさんが「大丈夫?」と声をかけてくれたり、
バスでおじいさんが私の分の席を確保して心配してくれたり、
電車で堅物そうなサラリーマンが席をゆずってくれたり。

ギプスをしていると、見ただけで怪我をしていることがわかるので、
いろいろな人が私のために今できることを、と心遣いをしてくれたのです。

それから、ギプス生活をしていて私が一番変わったのは、時間の感覚かもしれません。
元気な時は、時間ギリギリで家を出たりしていましたが、
ギプスになるとそうはいきません。
たっぷり時間の余裕を持って家を出たり、
忘れ物がないように入念にチェックしたり、
電車の時間よりも早くから駅で電車を待ったり、
余計に歩かずに済むように効率よく用事を済ませるように考えたり。

そうやって生活してみると、なんと気分の良いことか!
あせることもなく、
道端に咲く花がキレイだなぁと見とれる余裕もあり、
せかせかと歩く人を横目に悠然と歩くと、
まるで違う時間の流れを生きているかのようです。

この心地よさに気付いてから、
足が治っても、時間には余裕を持って出かけて、
余った時間は周りの風景を眺めたり、
本屋さんをのぞいたり、ちょっとお茶をしたりして、楽しんでいます。

ギプス生活のおかげで、
人のありがたさを実感し、感謝の気持ちが大きくなり、
今まで見過ごしていた些細なことに気付くようになり、
なんだかちょっと楽しく生活できるようになりました。
不自由で痛い思いもしたけれど、
なかなか悪くない経験となりました。

怪我は、たいていの場合、見ればわかりやすいので、
周りの人からも理解や協力が得られやすいものです。

けれど、心に抱える問題や病は、
目に見えないだけでなく、
そばにいる人間にとっても、あるいは本人にとっても、
分りにくいものです。
見えなくて分りにくいということは、
わかってもらえずに苦しい思いをして、
さらに傷ついてしまったりします。
自分自身にも見えないので、
傷が今どのくらい癒えているのかもわかりません。
本当に治るのだろうか、良くなるのだろうか、と
先も見えず、不安ばかりが膨らんでいきます。

カウンセラーというのは、
そんな真っ暗で足元も見えないような道を歩く作業を、
ぼんやりとした灯りで照らして
足元とちょっと先を見えるようにしたり、
この先はたぶんこんな風な道のりがあることを伝えたりして、
一緒に暗闇を歩く仕事のように思います。

カウンセラーが車になって乗せてあげて先に連れていくことは
残念ながらできません。
一緒に歩いていくことしかできません。
なので、クライアントさんが自分の足で一歩一歩踏みしめて、
歩いたり、立ち止まったり、迷ったりするのを、
隣で声をかけ、道を照らし、励まし、一人で歩けるようになるまで、
付き添います。

どうか、暗闇で迷っている一人でも多くの方が、
つらい道のりを共に歩くカウンセラーに出会い、
再び一人で歩いていける新たな自分を取り戻せますように。
そして、つらい道のりの中からも、何かを得られますように。

文:スタッフ sachi
代表:椎名 あつ子

2016.03.03

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