マイウェイ 女性カウンセラーのプチ・エッセイ

「よく聞いとけよ。
　人生にはつらい時があるんだよ。」

ある店のオーナーが、
ポロっとこぼした言葉がありました。

彼は、ひとつの店を失い、
大切な従業員を失い、
疲れ切っていた時だったんだと、
ずいぶん後になって知ったことがありました。

あの時、そのオーナーはぐちひとつ言わず、
この言葉だけを残した意味が、
今になってよく分かります。

たくさんの噂話を聞き、
表面的にしか分からないまでも、
彼の非情に思えた行動を、
私も不信に感じた時期がありました。

でも時間が経つ中で、
その人の真実が見えてきた時、
その人の生き方が分かった時、
あぁ、人生ってつらいときがあるんだと、
彼に対して理解ができました。

その人は、今、また新しいスタートを
しはじめようとしています。
守るべきもののために、
切り捨てた過去の想いを忘れないために、
今、彼は、耐えた結果、
そこから越えようとしています。

先日、彼の友達でもあるミュージシャンのライブを、
夜中、聞きに行きました。
彼もまた、50歳になろうとしている
ロックのベースギタリストでした。
たくさんの若い人たちの発狂のような悲鳴の中で、
彼はクールにベースを弾き続けていました。

彼らの様々な人生の中で、
つらい時期を越えた姿が、
そこにはありました。

好きな道を生きるための孤独との闘いを、
私は、夜中の横浜の小さなライブステージで
感じることができました。

私とは果てしなく違う生き方の中で
ひとつだけ分かることは、

　クールに堂々と生きる！

ということでした。

クールとは、冷たいということだけでなく、
冷静であることだということ。
大人とは、そういうことだということ。

夜中のライブの途中で静かに外に出た時、
冷たい秋の風が心に刺さりました。

若者たちは、酔いと興奮で熱くほてったまま、
始発の電車を待ち家に帰り、
そしてもう若くはないベースギタリストは、
静かに目をつぶるのでしょう。

今日も一日が終わったと
しみじみと思いながら。

50代の人生のあり方を考えた時、
あぁ、私はまだまだだなと感じた
連休の最後の月曜日でした。