2006年11月アーカイブ

2006年11月01日

花の絵

先日、お世話になっている画家さんの個展があり、
広尾まで出かけてきました。
「人物と花」というタイトルで、
華やかな花の絵が、
静かで洗練された画廊に
展示されていました。

何年か前に、私はその先生の別荘に
招待されてお伺いしたことがあります。
八ヶ岳にその別荘はあり、
自然の木々の中に、
小さなアトリエと離れがあるお宅でした。

この日は、先生の息子さんも一緒でした。
息子さんは、もう大人ですが、
障害を持っており、
会話することはできません。
先生は、その息子さんに食事を作り、
話しかけ、時には叱り、
愛情豊かに接していらっしゃいました。

その息子さん、Kくんは、
とても素直で繊細な人でした。
私が台所をお借りして食事を作っている間、
小さな子どものように、
お皿を持って私の側で立って待っていました。
「Kくん、おすわりして待っていてね」
と言うと、座って待ってくれました。
会話はできなくても、
言葉は分かっていました。

私が帰る日、先生は車で
駅まで送ってくださったのですが、
「さよなら。またね」
とKくんに言葉をかけたとき、
彼はうつむきながら、うなずいてくれました。

私は、あの日のKくんの姿が、
愛しくて、切なくて、悲しくて、
忘れられません。

先生の絵は、とてもきれいな色彩で、
とても明るく、堂々としていました。
たくさんの色が使われていて、
とてもかわいらしい雰囲気を
かもし出していました。

先生の絵の花たちは、
息子さんのKくんの心のようでした。

父親の無条件の愛に支えられていてるKくん。
そして、Kくんの心を描き続けている、
父親でもある画家の先生との
人間対人間、そして親と子の絆を
改めて感じて帰ってきました。

個展を見た後、
私は少し歩きたくなり、
公園のベンチでしばらくの間、
座っていました。
広尾の街が、とても穏やかに感じられ、
この街が好きになりました。

投稿者 椎名 あつ子 : 13:43 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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