2007年10月アーカイブ

2007年10月22日

愛の賛歌

ひとすじの涙を、
二度、流した日。

今日は、はるか彼方まで、
この世がさわやかであるような、
そんな秋晴れの日曜日。

久しぶりに、映画を観に行った。
私の大好きなシャンソン歌手である
エディット・ピアフの一生を
赤裸々に語っていた。

パリのモンマルトルの路上で歌う、
勝手な母親と、
大同芸人の父との間に
生まれた彼女は、
4歳の頃、母に捨てられ、
勝手な父親の生き方に
振り回される幼児期を送る。
母親代わりの娼婦や、
たくさんの恩人とも
引き裂かれる運命の中、
麻薬とお酒におぼれていく。

それでも、そんな彼女の歌を求める
たくさんの人たちの心を惹きつけて、
彼女は生きていく。

あまりにも勝手で、自己中心で、
傲慢で、攻撃的な彼女が、
唯一愛したアメリカ人は、
妻と3人の子どものいる
ボクサーだった。
彼女は、自分の物には
決してならない唯一の男を、
心全身で愛する。

ある日その男は、一日も早く
愛する彼女に会うために、
飛行機に乗る。
彼女は、彼にカルティエの時計を
プレゼントするために、
この日を待つ。

そして彼は、
二度と会うことのない人になった。
飛行機が墜ちた。

それが「愛の賛歌」を
歌うことになった意味だということを、
今日、初めて知った。

彼女は、その日から、
亡くなるまでの10年間、
薬とお酒で、廃人のようだった。

50歳程の、
彼女の最期のメッセージ。

「私には悔いはない。
私の上に過去起きた
良いことも悪いことも、
すべて私にとっては同じこと。
私には悔いはない」

涙がひとすじ流れた。

しばらくの間、ボーっとして、
夜、パリでエディット・ピアフが
歌っていた小さなシャンソエのような、
小さな横浜の酒場の
ライブに出かけた。
偶然、ピアフの曲を、
年老いた男性が歌っていた。

「他の人と踊ってもいいの。
でも、私がここにいることは、
忘れないでね」

また、涙が流れた。

今日は何故か、
愛の賛歌におぼれた日だった。

こんな私にも、
決して口にはしないだろうけれど、
大切な人がいる。
いつか、もっとスナオになれれば、
もっと楽に生きられるのかもしれない。

ピアフの生き方も、
考え方も、行動も、
好きにはなれないけれど、
彼女の歌は、変わらず大好きで、
同じ女であることには
変わらないことを知った。

今日は、一晩中、
彼女のCDを静かに流して眠った。

投稿者 椎名 あつ子 : 17:14 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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