2007年12月アーカイブ

2007年12月03日

オペラ

オペラを、家族で聴きに行って、
久しぶりに食事をした。
優雅な時間のあと、
心地良い気持ちで自宅に戻った。

私は一人の部屋で、
オペラをまた聴きながら、
想いに耽る。

今日来た、ある人の夫は、
家を出たあと、
プラットホームで
命を突然おとした。
過労死だった。

私は、もう一人のある人を、
その人と重ねて思った。
その人は、遠い国へ、
家族を日本に残し、
仕事に出かけるらしい。
危険な場所と知りながら、
最期のときでも、
トップであるその人は、
まず、会社の従業員の家族と
そのスタッフを
守る義務があると言っていた。

昔の特攻隊を思った。
国のため、命をおとした若者の、
その時、瞬間の気持ちを考えた。
彼らは、何を想ったのだろうかと。

従業員の家族を守る義務と責任を
話していた彼の、
本当の家族の気持ちを考えた。

カウンセラーの私も、
その人の家族も、もう何も
その人には言えない環境の中で、
涙が出そうになったのは何故なのか、
一日、ずっと考えていた。

「無事、帰って来てね」

きっと、これはその人の奥さんのことば。

特攻隊の母親や妻が
言いたかった本当のことばは、
お国のためにがんばってきてね
ではなく、
生きて帰って来てね
だったはず。

今でも、企業戦士はいる。
会社のため死んだ人と、
会社のために命をかける人と、
今日のオペラの悲劇と、
すべてが一緒になった。

少し泣いた。
いや、訳が分からなくなった。

私は、私の人生は、
どこに向かっていくのかと、
少しメランコリックになった。

オペラはいつも、最後は
悲しみがともなう。
その悲しみは大きくて、
そして、ささやかでもある時間。
もしかして、悲しみは優雅だから
感じられることなのかもしれない。
悲しみと優雅は、
隣り合わせなのかと
自問自答した。

それでも、
オペラはいつも美しい。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:20 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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