2008年03月アーカイブ

2008年03月14日

目ざめ

不幸な母親がいる。
子どもは、入退院を繰り返し、
少し良くなった兆しが見えてきて
喜んでいると、
勝手な行動が目立ちはじめ、
それを止めると暴れだし、
自傷行為に走り、
脅しのように、家出を促す。

美しい顔立ちの母である彼女は、
弱りきった心と体を
やっとの思いで動かしながらも、
変わり果てた娘の姿と、
もっとこれから変わり果てていくだろう
娘の姿を思い、悩み、絶望し、
涙も枯れ果てていた。

「もう私、あきらめました。
こうなる原因を作ったのは
私かもしれないけれど、
もう、何をして償えば、
あの子が分かってくれるのか、
変わって良くなってくれるのか。
そのために、もう全てを尽くしきって
しまったように思えて。
だから、あの子をあきらめてあげることが、
優しさなのかと思うのです。」

つらい時間だった。
娘本人の病気のつらさも、
十二分に理解できるし、
理解し続けていきたいと思う中で、
母親の姿は、
あまりにも地獄の世界だった。

あきらめてあげることが、
優しさなのか?
…そうなのかもしれない。

でも、今の娘に、
この奥深い母の気持ちが
分かる日が来てくれるのだろうか。

放置でもなく、
見捨てたのでもなく、
ただ、求めない。
心の中で、そっとあきらめる。
それでも、母にとっては、
娘であることには変わらない。

目をしっかりと開いて、
よく考えて、
戻っておいで。
安易な道を捨てて、
逃げないでこっちの道に戻っておいで。
あなたの本当の味方の
お母さんの側に、
近付いておいで。

魔法があるなら、今すぐにでも、
私はあの子に気付かせたいと、
本当に祈る気持ちで、今はいる。

目ざめてほしい。

投稿者 椎名 あつ子 : 14:26 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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