2008年11月アーカイブ

2008年11月21日

重い扉

ある日のカウンセリングでのこと。

小さい頃、父と母は、
いつも怒鳴りあいのけんかをしていた。
母は、結婚で、好きな仕事を
辞めなくてはならず、
そのことでずっと、父を憎んでいた。
その間、泣いている母を、
ずっと小さい時からなぐさめてきた。
いつも、相談役は私だった。

しばらくして、姉が、
家庭内暴力をするようになり、
学校に行かなくなった。
鬼のような顔つきで両親を罵倒し、
家の中の物を壊し始めた。
私は、姉の相談役係がプラスされ、
姉が静かになると、母をなぐさめた。

父は、自分には関係ないといった態度で、
家に帰ってこなくなっていた。

私は、姉も母も守り続け、
父の役割を、10歳からずっと
し続けてきた。

そんな、苦しかった長い歴史を、
そのときの感情を、
やっとの思いで母に伝えた。

「今さらになって言われても…
何をして欲しいの?」

と、母はそっけなく答えた。

「10歳の、あの時の私の気持ちに、
まずはなってみてください。」

と、母に、冷静に、私は答えた。

………………………………………………………

やっとの思いで、
母親に打ち明けられたことをカウンセリングで話す彼女は、
色白の肌に、うっすらとピンク色の赤味がさし、
きれいな表情となっていた。

「自分の心から逃げなくなって、
自分の心を素直に見れるように
なってきました。」

逃げてきたのではなく、自分の心を守るため、
意識して自分を見ないようにしていただけだと、
私は感じた。

大きな重い扉を開けるという作業を、
カウンセリングの中で共にし、
今度は、扉の中のたくさんの物を
一つ一つ整理していく作業となっていく。

彼女はこれから、
もっともっと美しくなっていくのだろうと思うと、
本当に楽しみである。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:10 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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