2009年09月アーカイブ

2009年09月14日

美しさとは

一冊の本を読み終えた。
最近、本をじっくり読むことを
していなかった私は、
この本を、あっという間に
読み終えた。

彼の本が、いつもそうであるように、
この本もまた、重い内容で、
難しい問題をたくさん秘めた、
考えさせられる作品だった。
正直、読んでいて、
何度もやめたくなる時があり、
読み終えた後も、
苦しい感覚が残った。

人は必ず、いつか死ぬということ。
殺人であっても、
事故であっても、
自殺であっても、
病気であっても、
いつか必ず、人は死んでいく。

たくさんのメッセージが、
この本の中にはあるのだろうけれど、
ひとりの母親が、
がんで亡くなるまで、
在宅ホスピスを望み、
家族にどこまで迷惑をかけず、
自分の尊厳死を守り通せるか、
最期の時まで、
意識のはっきりした命の形、
ひとつひとつを細かく描写しており、
自分の死を考えずには
いられなかった。

人は必ず死ぬと、当たり前のこととして
理解しているけれど、
与えられた命を全うして
最期のその時まで
生き抜いていく力強さを尊敬しつつ、
自分にできるのか、
苦しく、恐れを感じながら、
最後のページを迎えた。

作者の混乱と苦しみも、
本の中には伝わってきていて、
あとがきの言葉には、
この本ができるまでの8年間の
長い月日の葛藤が残されていた。

みんな、生きるということの答を
見出すのには、
苦しみが伴うんだ。
そうとも思えた。

ただ、本の中で、母親の最期の日、
新しい命の誕生があり、
それはまさに、救いだった。
この作者は、きちんと私たちに
最後には救いを残してくれていた。

素晴らしい作者だと、
改めて彼の本を、
再び読み始めたくなった。

切ないから秋が美しいように、
切なさがあるから
人の命もまた、美しいのかもしれない。

白いゆりと青いりんどうの花束に、
ひっそりと秋を思わせる
すすきの存在を見ながら、
感じた日だった。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:57 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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