2010年07月アーカイブ

2010年07月07日

目を伏せるとき

カウンセラーであっても、
この仕事のプロフェッショナルであっても、
相手の目を見て話が聴けなくなり、
もっといえば、
目を見て話ができなくなり、
涙が出そうになり、
感情があふれ出しそうになる。
一瞬の時間が、
とても長く感じられるときがある。

頭の中で、
ありとあらゆる言葉が消えてなくなり、
心臓の音だけが、
時計の音よりも大きく感じるときがある。

目を伏せずにはいられない自分に
戸惑いながらも、
私も、生身の人間だと思えるときもある。

私はそういうとき、
必ずといっていいほど
思い出すことがある。

優しすぎた義母が、
末期のガンに侵され、亡くなる前、
眉間に険しいしわを寄せて、
今まで見たことのない表情で、

「くやしいのよね」

と言ったとき、
私は、目を伏せた。

私は、あれでよかったと、
今でも思っている。

彼女を見続けることは、
侵してはいけない領域に入り込むことだと
感じたのかもしれない。

人は、見てはいけない、知ってはいけない
極限の何かがあるのだと、
教えられたときだった。

目を伏せずにはいられないとき、
私は、いつも義母に
助けられている気がする。

今日、そんな瞬間があったときだった。

投稿者 椎名 あつ子 : 15:58 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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