2010年08月06日

稲妻

三浦の家を久しぶりに訪れた。

暑すぎる夏の夜を、
時折吹く涼しい海風に
いやされながら、
ベランダから、
遠い海の向こうを見つめる。

海の向こうは大雨らしく、
音もなく花火のように、
稲妻が、
時折空を明るくする。

音のない雷は、
光の線だけが美しく輝き、
なんとも不思議で、
穏やかな夏の演出となっている。

こんな風景は、横浜では見れないし、
横浜から1時間弱の場所とは
思えない空間が、
ここにはある。

焼けるような強いお酒も、
夏の夜には似合うなと思いつつ、
この時間、私は、
ひとりが好きな自分に
どっぷりとひたる。

音のない稲妻は、
遠いところの、
押し殺した怒りのようだ。
それは決して攻撃的ではなく、
悲しく、そして美しい。

夏の夜の空を、
こんなにもゆっくりと
眺めることが、
本当になかったと実感する。

人は、怒りと悲しみを
いつも抱きながら、
そして、隠しながら、
生きているのかもしれないと、
遠くに見える、
夜の地平線を見つめながら、
思った。

生きているとは、
なんて美しく、
そして、なんて孤独で悲しく、
だけど、雄大なことなのか。

それを教えてくれた
三浦の夜の空。

この、美しいきれいな感覚を、
大切にしたいと思った夜だった。

投稿者 椎名 あつ子 : 15:35

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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