2015年07月アーカイブ

2015年07月02日

びわ

 

オレンジ色のびわがとてもかわいくて、
旬のくだものとしても大好きなので
買いました。

「びわはやさしい木の実だから、
抱っこしながら ゆれている」

昔、子供の頃 びわを食べながら
歌っていた童謡を思い出しました。
「抱っこしながら ゆれている」
のは今だに見たことがないな、
そう思いながら
びわの歌の歌詞を探しました。

「びわはやさしい 木の実だから
だっこしあって うれている
うすい虹ある ろばさんの
お耳みたいな 葉のかげに

びわは静かな 木の実だから
お日にぬるんで うれている
ママといただく やぎさんの
お乳よりかも まだあまく」
歌詞 まどみちお

「だっこしながら ゆれている」
と思っていたけれど
うれているだったことをはじめて知りました。

そして、ママといただく びわが
甘かったのは、私も 同じだったのかもしれないと、
思ってみたのでした。

でもどうしても思い出せないのです。

びわを母と食べた幸せな時間を。
昔の小さかった頃の私と母が
びわを食べてた時間は、
きっと私にとっては最高の何かのごほうびの日
だったのかもしれないとか、
だから、ずっとびわが大好きで
この時期、いつも買っていたのかもしれないとか、
考えたりして、それでも、
全く思い出せないことが悲しくて
記憶にない記憶を一生懸命探してみました。

でも、そんなやさしい、静かな
母との記憶は
正直、私には無いのです。思い出せないのです。
私が子供の頃、
母はいつも おこっていました。
母はいつも イライラしてました。
母は 私がテストの点がいいときは、
いつも笑ってくれました。
そして、「もっとできるわ」といいました。
私は、母が私が何かできてよかった時にやさしかった以外
母の笑顔は
私の小さかった頃の記憶にはありません。
だからびわの記憶もありません。

そんな母も80才近くになり、
病気になりました。
まだ、私は、この病気の内容のことを母に
いえずにいます。
いついうべきか悩んでいます。
それでもこれから 私と母との
闘病時間が始まります。

だから私は、とにかく、小さかった頃の
やさしく、静かな記憶を
どうしても、どうしても、
探したいのです。必要なのです。
そして、母にやさしく静かに
接したいのです。
もし、私と母に残された時間が
少ないのであれば
すべてを受け止めて、あきらめず、
やさしく、
そして私と母との過去を
悲しまずに
大きな 大きな 大きな
最高の甘い愛で
包み込んで、
涙は流さずに、
凛として、
ありがとう と 母に
いいたいのです。
それが 神様に与えられた
そして人として、母の娘として、
ためされている 時間なのだと
思います。
母は今はとても小さくなりました。
そしてとても とても やさしい人です。
かわいくて、今だに美しい人です。
だからびわは 本当に
忘れられない 木の実となりました。

今だからこそ
びわを母と食べたいと思います。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:37 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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