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ラベル

こんな話をどこかで聞いたことがあるでしょうか。

 

ある優秀な外科医のもとに、

大きな事故にまきこまれて重体の少年が運び込まれ、

その父親が外科医に

「うちの息子をどうか助けてください」と頼んだ。

それを聞いた外科医は、自分の息子であるその少年を助けたいと

必死で手術をした。

 

 

というお話で、疑問に思った方もいるかと思うのですが、

これは、外科医が女性で、少年の母親というオチがあるのです。

 

これは、先入観に気付くお話として

あちこちで引用されているお話なのですが、

「優秀な外科医」というラベルによって生じてしまった先入観です。

 

今日は、最近私が感じているラベルについて書きたいと思います。

 

私はもう一つ別の職場でも仕事をしているのですが、

そちらでは、「発達障害」と言われる子どもと

接する機会が多くあります。

 

ADHDだとか、アスペルガーだとか、広汎性発達障害だとか、

いろいろな子どもと関わるのですが、

それらは「診断名」であり

その子どもたちが持っている特徴をグループ化して

名づけたものです。

それは、子どもたちの抱える困難にラベルをつけることです。

 

ラベルは時に便利で、時に注意が必要だと感じます。

 

ラベルをつけるメリットは、

簡単に内容がわかることです。

 

ADHDというラベルがつくと、

授業中に立ち歩いているのは、

ふざけているわけではなくて、

じっとしていることがつらいんだなと

理解しやすくなり、

「ちゃんと座っていなさい」と言うのではなくて、

たとえば「プリントをみんなに配ってあげて」と頼んで

動いても良い状況を作ってあげることができます。

 

いわゆる「ふつう」と言われる子どもたちと違った

一見わかりにくい行動について、

ラベルがついていれば、

そのことについて本を読むといろいろなことがわかります。

 

ラベルがついていると、

必要なサポートをいろいろなところで受けられる場合もあります。

 

 

ラベルをつけるデメリットは、

ラベルだけを見て

その子ども自身のことを見なくなる人がいることです。

 

ADHDだから・・・で済ませてしまい、

その子の本当に困っていることが

どんな状況でどんなことなのか

どんなサポートが必要なのか

丁寧に見てあげることをしなかったり、

その子がどんなキラキラした素敵なところを持っているのか

見えなくなってしまったりします。

 

また、ラベルを付けてそれを親や本人に伝えることが

必要だと思いがちになります。

 

けれど、ラベルをつけることがその子にとって本当に必要なのか

ラベルを伝えることが本当に必要なのか

それはその子どもや親によって、

状況によって、違うのだと思います。

ラベルをつけたほうが理解しやすい人もいるからです。

 

この子はADHDですと伝えるよりも、

「この子はこういうことが得意でこういうことを活かしていくと

きっと輝きます」

「けれどこういうことが苦手で、それは他の子と同じようにやるのではなくて

こういう工夫をするとやりやすいかもしれません」

「どんなやり方がより良いか一緒に考えましょう」

「一斉授業では情報が多すぎて、大事なことを聞き取ることが難しいので、

少人数での授業の方が伸びていくと思います」

「気持ちを表現するのが苦手なようですが、

こういう気持ちのときにこういう行動をとっていることが多いです」

など、

子どもの特徴を伝える方がいい場合もあります。

 

 

発達障害について、あるいは他の精神疾患についても、

さまざまな考え方を持っている人がいるので、

ラベルについては一概には言えないことですが、

 

私たちが心がけたいのは、

ラベルだけを見るのではなくて

先入観を持たずにその子どもやその人の中身を

丁寧に見ることなのだと思います。

 

 

文:Sachi

代表:椎名 あつ子

 

 

 

2015.07.21

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