2024年04月09日

許すことと手放すこと

「どうにかうまくいくために、わかり合えるために
たくさんの時間を費やしてきたし努力もしてきたけれど、
妻は私の全てを憎んでいて許すことができず
私を責め続け離婚したいと言いながらも
それなのに別れようともしないのです…。」

それはある夫の言葉でした。

妻は夫の過去の行動や些細な言葉や価値観を
どうしてもどうしても許せずに
恨みや責める気持ちがいっぱいになっていました。

それでも別れない妻の心理はとても複雑でもあります。

その妻の気持ちは別れることで失うものや
直面する可能性のある孤独や不安を恐れているのかもしれません。

過去の経験やトラウマが影響している場合もたくさんあると思います。
恨みや責める気持ちは過去の出来事や
夫の行動に対する深い深い感情であり
夫がたとえ亡くなってしまっても、
それを乗り越えることは簡単ではないでしょう。

別れることがその気持ちを解消する唯一の方法とは限らないため
今の状態に留まってしまうのかもしれません。
それは、ゆがんだ形の依存になってしまっていますが
本当は夫からの承認や愛情を求めているのかもしれません。

ただ、夫にも限界がある場合があります。
男性には多くの場合、
家族という1つの城を守るため
忍耐力がある場合もありますが、それが一度切れてしまうと
妻に愛情を与えることが難しくなってしまうこともあると思います。

許すことは他者に対する怒りや恨み、過ちに対して
心の中で和解する事を指すことと思います。

そして許すとはその傷を忘れることではなく
それは負の感情を手放して心の平穏を取り戻す作業で
自己の成長へのプロレスなのかもしれません。

夫婦の問題はそれぞれの異なった性の上に成り立つなかで
ことごとく違う感覚もあり、全てわかり合えるはずもないことでもありますが、
「許す」ことでいろいろなものを手放して
軽くなって次へと歩んでいけたら、
そこには考えもしなかった満ち足りた安らぎと
優しさがあるのだと信じたいと思わずにはいられない時でした。

投稿者 椎名 あつ子 : 15:34 

2024年04月03日

桜の時

桜が咲き始めました。

今週末頃には近くの公園でお花見をしたいと思っていますが
この時期は春雨も多く、肌寒い日もあり
桜を観るタイミングがずれると
あっという間に桜の花びらが散り始めてしまったりして
淋しい気持ちになります。

それでも人は桜のひとひらの花びらを
観ずにはいられない気持ちになるのです。

桜の美しさや儚さは
いつも人との関係の深さや変化を感じる時でもあります。

桜の花が咲き誇る瞬間の美しさには
桜の花びらの舞う風や
花びらを濡らす雨や
花びらを称える光や
そして、凛とした強さの中に精一杯生きる意味や
別れの痛みや…

そんな姿は一期一会の意味や
価値を考える時間とも重なり別れや出会いを通じて
過去の繋がりを思い出させられたりするのだと思います。

昨日、昔出会った懐かしい人から連絡をいただきました。
その人はとてもとても優しくて
時に激しく、そして繊細で壊れてしまいそうで、とても可愛い人でした。

その人はいつも愛を求め、愛に疲れ
それでも愛を信じている人でした。

私は彼女を見るといつもぎゅーっと抱きしめたくなっていました。

あれから何年も何年もの月日が流れていました。

この桜の時期に、
その人が桜の香りを届けてくれたように思ったのでした。

きっときっと貴女は素敵な人になっているのでしょうね。
あの頃よりもずっと強くなって
そして、たくさんの愛を周りの人に与えて
愛を与えてもらって真っ直ぐに生きているのだと
彼女の言葉の中から感じた日でした。

連絡してくれてありがとうございました。
本当に、本当に素敵な日でした。

投稿者 椎名 あつ子 : 15:53 

2024年03月19日

ヒヤシンスの花 ~哀しみを超えた愛~

母がヒヤシンスの花の写真を送ってきました。

「去年、貴女がプレゼントしてくれた
ヒヤシンスの花を庭に植えました。
そして
可愛い花を咲かせてくれました。
生命のすごさを感じました。
可愛いです。
嬉しくて送りました。」

去年、街を歩いていて
オシャレなお花屋さんの店先に
三色入ったヒヤシンスの植木を見つけて
何故か、母にサプライズさせたくて
わざわざ車を走らせて渡しに行ったのでした。

花が咲き終わった後に
母が庭に植えておいたのが今日、
再び花を咲かせたとの嬉しい知らせでした。

今、改めて思い出してみて考えると
昨年ヒヤシンスの花を渡しに行った数週間後
母と私は突然仲違いをし、傷つけ合い
しばらくの間私は母との距離を置きました。

その間も土の中でこの花は命をあたためて
再び春の訪れと共に私と母の前に現れてくれたのでした。

「おだやかに平和にね」と白く可憐な花が伝えてくれているようでした。

この年になってもまだまだ人としても未熟で
アマチュアな私は母からのLINEの言葉に
恥ずかしくて自分が情けない気持ちになりました。
少しぼけはじめて、分からないことを言い出した母を
あの時許せなかった私がどれだけ残酷で冷たい娘だったのかと思うのです。

老い始めて訳分からないことを言い出した母を愛おしく思う前に
私がショックを受けて混乱してしまったのでした。

母との壮絶な過去と現在と未来の形と
老いの現象を受け止めて受け入れることが親への感謝と愛なのだと
やっとやっと少しずつ見えてきたところなのかもしれません。

本当に…
ヒヤシンスの花はたくさんのことを
私に教えてくれたのでした。

そして今日知ったこと、それは
ヒヤシンスの花言葉は「哀しみを超えた愛」でした。

投稿者 椎名 あつ子 : 14:02 

2024年03月12日

恋と愛

「決して手に入らなかったもの、それはいつまでも変わらない。
手に入れてしまったもの、それはいつか色あせていく」
サラ・ティーズデイル (米国の詩人)

長い間あこがれていた品物をようやく買うことができるのは嬉しいことでしょう。
しかし、どうしても欲しくてやっと手に入れたものでも、最初の高揚感は長続きせず、
だんだん「色あせて」いくことも多いようです。

これを「ヘドニック・トレッドミル」 (快楽順応)と呼び、
幸福度が一時的に高まっても、また元のところに戻っていく
ランニングマシンに例えられます。

新たな高揚感を求めるように買い物を続ける。
まるでトレッドミルの上を走るように。
しかし脳が快楽に順応して
その状態を当たり前のものだと感じてしまうのも早くなる、というわけです。

イェール大学で人気を博した
「心理学と幸せな人生」 講義のローリー・サントス教授は、
この脳の持つバイアスに対処するには、
「長く持たないものにお金と時間を投資する」ことが有効だと述べています。
つまりモノではなくコト、旅行や体験といったものです。

大切な人に会いに行くことや、食事なども当てはまるでしょう。
唯一無二の経験は記憶に刻み込まれ、時間が経つにつれて
より貴重な思い出になっていきます。

これは男女の間でもいえることかもしれません。

「恋」と「愛」
「恋に落ちる」とは言いますが、
「愛に落ちる」とは言いません。
「恋」は なにか突発的なもので高揚感を伴いますが、
時とともに最初の情熱から遠ざかっていく。

「出会った頃はあんなに幸せだったのに」と飽き足りなくなり、
やがて二人の関係がマンネリだと感じてしまう。

この刹那的な「恋」が、長続きする「愛」に変わっていくには、
脳が幸せを当たり前のものとして順応してしまわないように
「努力」 して関係を育んでいく必要があるかと思います。

日々の食卓など小さなことでも相手に感謝し、幸せだと感じる。
日常の中で、少しの変化や成長を大切にする。
健康でいられることを慈しむ、
そしてモノではなくコト、つまり食事や旅行や、散歩でも、
とにかく一緒に何かをして時間を過ごす、
これらは意識しないとなかなかできることではありません。

そしてサントス教授も述べているように、
「他の人たちとは比較しないこと」。
幸せになるため、愛を育てるためには
「努力」も必要なのだと思います。

もう一つの言葉
「すべてのものを手に入れることなんてできやしない。
第一置き場に困るだろう?」
スティーブン・ライト (米国のコメディアン)

「うーん」と感じさせられるユーモアのある言葉だと思いました。

投稿者 椎名 あつ子 : 13:41 

2024年03月05日

ひな祭り

今日は、お孫ちゃんの初節句、
そして、両親の卒寿.米寿のお祝いを
しました。

家族全員が揃って集まり
ホテルでお食事会をする事ができました。

90歳の父、88歳の母は
私の娘達夫婦、そしてひ孫ちゃん達に囲まれて幸せを噛み締めていました。

父がみんなの前で感謝の言葉を述べた時、
私は様々な過去の時間の中の
セピア色の風景や、
光の色や、
無邪気な音や、
切ない香りや
柔らかくて穏やかな感覚などを

感じながら
目から流れ落ちて止まらない
不思議な透明な物を
貯めておける入れ物がないかと
探していました。

「人生は、長いようで短いです」

父の言葉の意味を
心に刻みながら、

わたしが生まれてからの
命のバトンの繋がりを大切に
守り続けて

たくさんの感謝と
そして、穏やかな優しさを
祈りつつ

今日という日を心に刻みました。

投稿者 椎名 あつ子 : 14:40 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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