2023年05月アーカイブ

2023年05月23日

フレンチ・パラドックス

最近、久しぶりにパリを訪れました。

あらためてパリの人たちの生活の豊かさを感じ
久々のフランス料理などの食べ歩きを満喫しました。

ところで、フランスは肉の消費量が世界でもトップクラスで
喫煙率も高いにもかかわらず、
他の西欧諸国に比べて心臓病による死亡率が低く
また例えばアメリカに比べても肥満が少ないことが矛盾、
いわゆる「フレンチ・パラドックス」として知られています。

フランス人はチーズやバターの消費量も
アメリカ人に対しはるかに多いですし、甘いものもたっぷり取ります。
私の知り合いの話でもフランスでは前菜はスキップしてでも
デザートは取るという人が多いとも聞きます。
(私はフランスに行くようになってから、甘いものを取るようになりました…)

しかも一つの皿に盛られる料理が一人では食べきれないほどの量!

「フレンチ・パラドックス」の謎解きは、
フランス人がワイン、特に赤ワインを多く飲むことにあるというのが通説です。
赤ワインに含まれるポリフェノールが悪玉コレステロールの酸化を防ぐことで
動脈硬化を抑制する働きをし、
しかも最近では、赤ワインに含まれる「レスベラトロール」という成分が
認知症予防にも効果があるとの研究結果が出ているそうです。

しかしパリジャンやパリジェンヌたちが旺盛な食欲にもかかわらず
スマートな体型を維持しているのは赤ワインだけが理由ではないようです。

彼らは食事に長い時間をかけます。
日本の「定食」のようにすべてが一度に出るのではなく
前菜からデザートまで、一つ一つ時間をかけて出てきます。
彼らは話をしながらゆっくりと食事に時間をかけます。

パリのカフェの椅子と椅子の間はとても狭く、人との距離がとても近くて
しかも、何をそんなに真剣に話しているのかと思う程
顔と顔を近づけてペチャクチャとおしゃべりしています。

パリの風景の1つとしてカフェでの様子はとてもおしゃれで
フランス語のなめらかで色気のある言葉にもうっとりしてしまいます。
恋人や夫婦の間でも話し方や服装などを常に意識して
相手を惹きつける為やお互いが興味を持ち続けていく為の努力を
しているように感じます。

ゆっくりと食事をしながらゆっくりと会話を楽しむ優雅な時間など
私たち日本人には無いのが普通と思ってしまいますが
問題は時間だけではないように思います。

やはり男性として、女性として、人としての魅力を持ち続けられる為に
自然や芸術や食やファッションや全ての美しい物に
興味を持つ姿勢であるようにも感じました。

そしてまた、フランス人はその日、その日を大切にして
自分らしく生きているように見えるのですが、
それはフランスの結婚制度にも関係があるのかもしれません。

フランス人の半分以上のカップルは
籍を入れない事実婚という形を貫いている人も多く
また、結婚をしている人も
マンネリやなぁなぁという妥協や安易に考えたりせず
愛情に対して「現役」であることを意識しているようにも思えるのです。

また愛がなくなった場合には潔く別れも覚悟する…

私たち日本人とは、そういった考え方に大きな違いを感じます。
愛がなくなっても、子どもの為、経済的な理由の為離婚せず
どうにか、家族の形を守り続けることが
無難であり正しいことのような考え方が強いのも
今でも多いと感じています。

ただそれだけではなく、
私たち日本人に欠けてきている夫婦問題としては
「会話をしていくための努力」と
「お互いが興味を持ち続けるため努力」なのかなとも感じたりしました。

パリが大好きな私にとって
この場所は新しい自分を見つける場所でもあります。

今回はご年配のスタイルの良い美しいご婦人が
華やかなバラ色のワンピース姿で
お皿いっぱいのムール貝を
フランスパンとロゼのシャンパンと一緒に
夕暮れのカフェで一人で食べている姿を見ると
思わず「なんてカッコいいの!」と見とれてしまったのでした。

そんな光景をたくさん胸いっぱいに見てきて
また刺激をもらいにパリに行きたいと思います。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:21 

2023年05月16日

エリザベスカラー

生後半年のチワワのルビーが
去勢とデベソ、鼠径ヘルニア2箇所の手術を受けました。

病院に迎えにいくと、大きなエリザベスカラーをつけてぐったりとした様子。

因みにこのエリザベスカラーの由来は
16世紀に王侯貴族や富裕層の間で流行した襞襟で
元々上着の襟元と肌が触れる部分を清潔に保つための
実用的な機能を持っていたものが
次第に装飾として大きさや仕上げの精巧さを競うようになったとか。

特に有名なのはエリザベス1世の「アルマダの肖像画」で見られるもので
この巨大で絢爛豪華な襟を付けた姿で目の前で威圧されたら
配下たちは震え上がってしまったことでしょう。

今はむしろ犬やネコの保護器具の名前として知られていますが
中世の威厳の象徴をペット(しかも小さなチワワが)
身につけているギャップが滑稽にも映ります。

しかし当人(犬?)は変な障害物をつけられて元気なく
時々キャンキャンと甲高い鳴き声をあげて痛がる様子。

手術から5日経ってもおどおどした感じで
相変わらずキャンキャン痛がっているようなので
心配になり病院に連れて行ったのですが
病院に着いて見覚えのある看護師さんに
「あら大きくなったわねー」と声をかけけられるや
お腹を見せて喜んでいるではありませんか。

先生に傷を見せると
「きれいになってますよー、心配いりません 」とあっさり。

痛がってキャンキャン鳴くと訴えると
「それは性格ですね」とのお言葉。

性格って?? 

犬は飼い主に似ると言われますが
思わず恥ずかしくなってしまいました。

それから3日ほど経つと、見違えるように元気になり
エリザベスカラーをあちこちぶつけながらも活発に動き
カラーのマジックテープの部分にフェルトのボールがくっついても気にせず
そのまま寝てしまうほどになりました。

人間なら、
「ちょっとこの首のカラー邪魔だしカッコ悪いんで取ってくれませんか」と
ぐちのひとつも言いたくなるでしょうが
犬は文句も言わず、与えられた環境で
精一杯生きているのだなとあらためて感心しました。
 
前に歌人の小島ゆかりさんが
飼われていた猫について書いていたことを思い出しました。
 
「過去を振り返らず未来を恐れず(たぶん)、
なにひとつ所有せず、舌一枚で体の隅々まできれいに洗い、
日の当たる場所や風の通り道をよく知っていて、
おおかたは気持ちよく寝て暮らす。
猫に比べると、人間はつくづくできそこないだ」

大きなエリザベスカラーを背負いながら
一生懸命走っている小さな犬の姿を見ながら
愛おしさがさらに増しました。

投稿者 椎名 あつ子 : 14:31 

2023年05月10日

五月の青春

風薫る5月がやってきました。

大陸欧州の四季は、長い冬と夏に短い春と秋がはさまれ、
日の長い夏と暗く寒い冬の対照的な
二つの季節に大まかに分かれる印象がありますが、
日本は四季どころか
もっと目まぐるしく季節が変わると個人的には感じています。

12月から2月までは冬、3月に春がきて(花粉も!)
4月は寒暖差が大きく入り交じり、5月には一気に初夏っぽくなると思いきや、
6月から7月にかけては、じめっとした梅雨空に覆われ、明けて8月は猛暑
その後9月は台風の時期、10月は秋の長雨、11月にやっと秋らしい秋を迎えて、
12月からはまた冬に・・・という風に。

5月は程よく暖かくて湿気も少なく
外で過ごすには絶好の時期だと思います。

5月といえば思い浮かぶ曲に、
井上陽水さんの「5月の別れ」が私にはあります。

「5月の別れ」は
若い二人が別れゆく様子をうたったように伺えますが、
別離の歌ではあるものの、
「風の言葉」、「花束が目の前で咲き誇り」、
「青空」、「ほほえみ」、「レタスの芽がめばえて」、
「木々の若葉は強がりだから」
といった言葉がちりばめられ、
「眠りから醒めながら夢をひとつだけ」
「愛された思い出をひとつだけ」
という美しい詩のような言葉が重なり
曲調も併せて決して暗い歌には聞こえません。

5月の季節の中で
おそらくお互いを思いやりながら別々の道を歩いていく、
といった爽やかささえ感じます。

5月は木々も初夏を謳歌するように新緑がまぶしく、
新入生や新社会人も街に繰り出し、
なんだか何もかもが若々しく
これからの希望を感じさせわくわくします。

ただ、青春は
若い人達だけのものではありません。

年を重ねていく中で
愛の形は
古く美しい変わらない街並みや
自然や奥ゆかしさの言葉の中にも
生き続けていくものだと思います。

若い人も、年を重ねた人も、そして私も
しなやかに、穏やかにこの時期を過ごしたいと思います。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:59 

2023年05月02日

変わっていく「私」と変えられない「私」

最近、養老孟司さんの著述を読みました。

「個性があって当たり前、私があって当たり前と考えない方がいい。
 一貫した私という考え方は明治時代に西洋から持ち込まれたものだ」
と養老さんは説きます。

そもそも江戸時代までは、
日本人は名前が何度も変わりました。

幼名があり、元服すると名前が変わり、
また折に触れてさらに名前が変わっていきました。

例えば徳川家康は幼名を竹千代、
元服して松平次郎三郎元信(この名前の由来も面白いですが)、
その後に元康、そして家康、さらに名字も松平から徳川に改めと、
4回も変わっています。

またかつての市川染五郎が松本幸四郎になったり、
中村勘九郎が中村勘三郎になったりと、
歌舞伎役者が襲名で名前を変えていくのも、今に続く身近な例です。 

つまり江戸時代までは「私」がどんどん変わっていくのが自然だったわけです。
名前が変わるとともに、違う人生に切り替わっていき、
幸せだと思うことも時とともに変わっていく。

物理的にも
「人間を構成している成分は約1年で90%入れ替わる。
 人間は川のように流れ移り変わる。本当の自分など存在しない」
と養老さんは論じています。

これらの事は、夫婦カウンセリングで日々感じていることでもあります。

結婚当初の気持ちについて尋ねた時に
ある夫婦が話していたことです。

「夫は何に対しても論理的で自分にも厳しく責任感があり
完璧を求めて努力して進んでいる姿が頼もしかった…」

そして
「妻は果てしなく自由な感覚を持っていて
人とは違った個性が魅力的だった…」

しかし10年以上が経って
今は夫の厳しさが責められたり攻撃されているように感じる…

そして
妻の自由すぎる個性が目につき
自分と苦楽を共にしてはくれていないと感じる…

と変化を恨むようになっていました。

人は相手の変化を受けいれにくくなっていますが
実はお互い、持っている考え方の軸は変わっていない事が多く
しかし相手には子供ができたなどの環境の変化と共に
順応して変化してくれていくことを強く望んでいます。

その人、その人のあるがままの姿
つまりその人の軸さえも疎ましく感じてしまっていることが多いようです。

変わっていく「私」と変えられない「私」を受け止めて
尊重して、時には諦めて、流していけるようになれたらいいのかもしれません。

そんなことを、自分のことも含めて考えた日でもありました。

投稿者 椎名 あつ子 : 14:18 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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