2023年06月アーカイブ
2023年06月27日
〈いつものように いつもと同じに〉
今回も、大好きなフランスにまつわることを書きます。
パリで私が真っ先に訪れる場所が
パレ・ロワイヤルです。
そこは、1600年代の建築で、
王族の宮廷として用いられ
その後劇場が加わり
今では文化省などの省庁が入っています。
大きなフランス式庭園には
菩提樹の並木が真っ直ぐに整然と植えられていて
その木々の間の道を歩く時に
私は、何故かいつも、
「人生」を感じるのです。
その道の脇にはバラ園が庶民の憩いの場として解放されていて
また庭園を囲む回廊にはお洒落なアンティークのブティックや
レストランが並んでいます。
そして特に目を惹くのは
近代的な白黒のストライプ模様の円柱が設置されている中庭です。
古い歴史的建造物と現代アートが見事に調和し
そこはまさに私にとっては神秘的な空間です。
パレ・ロワイヤルの真っ直ぐに続く並木道を歩くとき
何故かフランクシナトラが歌った「マイ・ウェイ」の曲が
私の体の奥深い所から聞こえてくる感覚をいつも持ちます。
「I did it , I did it my way」(それが私の道だった)
そしてこの曲は実はオリジナルはフランスの曲で
「コム ダビチュード」(いつものように いつもと同じに)
というタイトルでフランスの国民的歌手クロード・フランソワが歌って
大ヒットしたものだということを最近になって知りました。
その後オリジナル曲をポールアンカがカバー曲として
英語版の「マイ・ウェイ」を制作したとのことでした。
「マイ・ウェイ」は自分の人生を振り返って
様々な思い出を懐かしく感じながら壮大な人生を感じる
そんな曲だと思っていたのですが
フランス語のオリジナルの歌詞は
男女のごく平凡ないつもの通り変わらない
少し切なくコミカルでもある日常生活を淡々と描いています。
なんてことない日常がいつものようにあること、
そしていつものように生きていくことが人生である、
ということなのでしょうか…
同じ曲でもこんなにも違う言葉の意味に驚きました。
フランスの常識を覆す冒険的な自由な発想と
そして、変わらないことの大切さ
この相反するように思える物の捉え方に
私は今日もまた、刺激と感動を感じながら
ワインを飲みたいと思います。
いつものように、いつもと同じに…
2023年06月21日
離婚のジレンマ
行動経済学に「サンクコスト」という用語があります。
Sunk=埋没したCost=費用、
つまり「支払い済みでもう戻ってこない費用」のことで
例えばある商品を販売するのに使った広告費は
その商品が売れても売れなくても取り返すことができません。
商品の研究開発費、人材の採用活動費なども成功・失敗にかかわらず
回収できないコストといえます。
経営判断には、たとえ過去に多額の費用を投じたとしても
将来性がなければそれを「サンクコスト」と割り切り
勇気をもって中断し撤退することが重要になります。
そしてこれはビジネスだけではなく
私たちの日常や人生にも多々あてはまります。
先日、今話題になっている「夫婦が壊れる時」という
ドラマを観ていて思ったことがありました。
このドラマは夫の度重なる裏切りに対して
それでも妻が子どもの為にもやり直そうと
再構築を覚悟し希望を持って進もうとしたのに
やはり裏切りが続いていることを知り復讐へと変わっていく…(?)
愛憎の狭間で揺れ動く
妻の姿勢が切なくも怖くなる内容なのですが…
ここでの夫婦カウンセリングでも
離婚をするか、それとも続けるのか、
または別居という形を取るのかなど
問題を抱えながらも「せっかく長年続いてきたのだから」
ここで別れてしまって自分のこれまでの人生を
「無駄にしたくない」という気持ちから
不本意な生活を続けてしまったり、
また、相手が巧みに浮気を隠し続けていたり
夫婦の共有財産を勝手に使っていたり
経済DVやモラルハラスメントで支配されていたり
経済的自立ができないことを利用されて
夫が好き勝手な生活をしていたり、
また、子どもへの言葉の暴力が続いていたり…
など様々なケースがあります。
離婚に関しての問題は法律も大きく関わることとなりますが
心理的には自分が今まで費やしてきた
「労力」、「時間」、「お金」を振り返る気持ちが
離婚という決断を鈍らせてしまっている場合も少なくはありません。
これこそが「サンクコスト」というジレンマなのかもしれません。
最近は特にコロナの影響からくる様々なストレスが
夫婦関係の亀裂へと進み悩んでいる人達が増えています。
大きな決断や覚悟する上でも一人で悩まずに
法律、精神、教育などの専門家に相談する事を
一度考えてみることも大切かも知れません。
そしてまた、経済について少しでも勉強することが
より客観的、理論的な考え方や判断を見い出してくれることにも
繋がるのかもしれないと感じた今日この頃でもありました。
2023年06月06日
親が「良かれと思って…」子にすること
「親の欲」について考えさせられたことがありました。
親は子どもを授かってはじめて親になれるものですが
生れるまでは、健康で五体満足な子を願い
数カ月して笑うようになれば、笑った我が子を愛しいと思い
歩き始めれば大喜びしてファーストシューズを選び
そうこうしている中、保育園や幼稚園に通い始めると
周りの子と我が子を比べはじめ
一喜一憂して安心したり悩んだりします。
静かに一人で部屋の隅で絵本やおもちゃで遊んでいれば
なぜ他の子のように一緒に遊ばないのかと思い
「○○ちゃん達と一緒に遊べば?」などと集団の中に入るよう促したり、
また、じっとしていられず大きな声で叫び突然走り出したりすれば
なぜこんなに落ち着きがないのだろうと思い
ついつい大声で怒ってしまったりします。
また子どもが成長すると共に
学歴や知名度の高い会社に入ることを親が強く主張しはじめ
その方向へと進ませようと必死になり
家庭教師や塾に通わせる中、
「こんなにお金を払っているのに、どうしてもっと勉強しないの!!」
「どうして成績が上がらないの?このままだと○○してあげないからね!!」
などの言葉で支配してしまっていることに気付かずに
それを「子どものため」、「親の愛」と信じている場合が多くあります。
そこから何十年か経って親が年老い、子どもが大人になってからも
子どもの頃からの親の支配や
他者と比べられて育ったことに対して
大人になっても苦しみや憎しみが消えず
親子の関係がどんどん壊れてしまっている関係性をよく聞きます。
子どもの誕生という
はじまりはすべてが感謝であり、喜びであり
愛しさであり、感動であったことも
年月が経つ度に、はじまりの頃を忘れてしまうのもよくある話でもあります。
はじまりは同じ気持ちであった事が
年月と共に次から次へと私たちは理想に近い変化を求めていきます。
そしてその変化は親の欲である場合も多いように思えます。
私たち人間は欲によって成長する場合もありますし
欲によって苦しむ場合もあります。
そんな中でみんな生きているのかもしれません。
親が子どものために「良かれと思って…」と考えるのは
悪いことではないと思いますが
今一度、子どもの心の状態を想像したり
子どもの立場に立って考えることを意識したりしながら
その子にあった教育をしていけたらと思います。
親と子の問題は永遠のテーマであるようにも
最近強く感じたことでもありました。
プロフィール
2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。
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