2012年01月アーカイブ

2012年01月30日

最近、また、地震が増え始めている。

昨日は、NHKで3.11の時の震災を
経験した人の話を特集していた。

目の前で津波と津波がぶつかり合うのを、
目の前にしたという消防団の彼は、
落ち着いて淡々と、
ひとつひとつの言葉をかみしめながら、
話をしていた。

「波の音はものすごく、ゴーゴーと、
 たくさんの物を飲み込みながら
 発していたけれど、
 私にとっては矛盾していますが、
 静寂な時間だったと記憶しています。
 そして、そのとき、
 生きることをあきらめました。」

と。
その人は、奥さんと19歳のひとり娘を失い、
ひとり残され、と話しつつ、
仏壇の前に座っていた。

昔の人は、自然を神の力と
受け入れながらも、恐れつつ、
食物が育つように、
実りへの感謝の祈りをささげてきた。
神は、私たちにいいことだけを与えはしない。
試練や、絶望や悲しみも、一緒に与え続け、
私たち人間に何かを教えようとしている。
自然は、そのなかのひとつなのかもしれない。

そんな中、先週、私の知り合いの奥さんが、
がんで亡くなった。
入院して1日で、この世を去った。
52歳だった。
突然すぎる出来事に、茫然とした。

この世に生を与えられ、
生きている今があり、
ただ、先のことは何ひとつとして
分からないという現実について、
考えさせられた。
今日、大地震が起きるかもしれないし、
1ヶ月後、死んでいるかもしれないという運命が、
誰にもあるということ。

ならば、人にもっと優しく生きよう。
ならば、自分をもっと大切にしよう。
ならば、少しでも笑って生きよう。

私の命の時間が、あとどれだけなのか
分からないのであれば、
そうだ、やっぱり、
1日1日を大切にしよう。
そして、もっともっとすべてに対して、
感謝のできる人となろう。
静かに目を閉じて両手を合わせる時間を
もっと持っていこう。

それが、今、私は生かされているということを
忘れないで生活していく一歩になると
思っている。

命。
なんと重い言葉なのだろうか。

そんなことを考えた週末だった。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:05 

2012年01月23日

母の誕生日だった。

75歳を過ぎた頃から、彼女はよく、
「死」について話すようになった。

「あと何年、生きていけるのかしら」
「あと10年は無理よね」
「その頃、私はいるかしら」

など、同年代の芸能人たちが
亡くなっていくのを見るたび、
悲しそうに、切なそうに、
ポツポツと言いはじめる。

そしてまた、少しだるかったり、
風邪をひいたり、
胃がムカムカしたりするたび、
重い病気になったのだと思い込み、
一気に元気がなくなってしまうのだ。

そんな母を見るたび、
人は老いていくのだと、実感する。
そして、老いていくということは、
必ず、死というものが目の前にあり、
それを毎日のように意識せずには
いられなくなるものなのだということを感じた。

そんな母に、母の大好きなラムが
たくさん入った、
フルーツケーキを焼き、
ネイルアートの券をプレゼントした。

「おしゃれできれいな母へ
 心も体も大切にして
 ずっと私の側にいてね」

2~3日後、母からお礼の電話がきた。

「病院の看護師さんが、
 あら、すてきなネイルね。
 ウキウキするでしょ。
 って、いってくれたの。
 毎日、鏡で指を見ているの。
 あー、すてき!!って思うわ。
 ありがとう」

75歳を過ぎた母だけど、
女性として美しく、
かわいらしさを忘れずにいるということは、
心をほっとさせてくれるし、
とても大切なことだと伝えたかった。

ずーっと昔、私が子どもの頃、
母は、私にたくさんのことを強制し、
従わせようとする人だった。
たくさんのことを指示され、
そんな母が、昔は嫌いだった。

今、あれから何十年も経ち、
母は、私が保護するべき人となっていった。

母を守ることが、
私の生き方のひとつとなっていることを
あらためて感じた日だった。

投稿者 椎名 あつ子 : 20:54 

2012年01月09日

2012年

新年明けましておめでとうございます。
2012年が始まりました。

奈良の興福寺の貫首の多くのお言葉の中に、
「冥の照覧」(みょうのしょうらん)
というお言葉があります。

冥(みょう)とは、暗いとか、
目に見えないという意味で、
人間を越えたもののことです。
そして、その視線が我が心に注がれる、
それが「冥の照覧」という意味だそうです。

確かに、私たちの五感で感じられる物は、
正確で分かりやすい物で、
人にも理解されやすいことでもあります。

ただ、心で感じ捉えなくてはならないことは、
見えないし、人それぞれの心の
奥深いひだの中にあるものなので、分かりにくく、
人からは流されやすいものです。

人の評価や人の目が気になるのは、
私たち人間の、悲しいかな、
あたりまえのことですが、
人の目の届かない所での行いや、
人には気付かれにくいけれど、
きめ細やかな思いやりや優しさは、
いつか、後になって、
分かる人には気付かれることだと思います。

「目に見えないから美しい」

といった、有名な、サン・テグジュペリの
星の王子様の一節のように、
分かりづらく、目には見えないからこそ、
心というものを、もっと感じ、
大切にしてゆきたいと思っています。

京都の紅葉の奥ゆかしい美しさや、
箱根神社の大きな杉の木の雄大さに
心惹かれるのは、
目に見えない時の流れという歴史が、
そこには刻まれているから…

そんな、言葉ではいいあらわせない言葉を、
静かに、穏やかに、
心の中に息づかせて、響かせ、
大切に大切にあたためて、
そして、誰かに伝えていくことが
できますように。

そんな1年になることを、心から祈りつつ、
今年最初の気持ちとして、
皆さまに伝えたいと思います。

人それぞれの、たったひとつの心を
大切に…

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

投稿者 椎名 あつ子 : 18:06 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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