2009年09月22日

導かれた日

その日は朝から、
東京に映画を観に行くことに
決めていた。

久しぶりに車を銀座まで走らせ、
着いたのは、ちょうどお昼過ぎだった。
夕方の時間からの映画には、
まだ時間もあり、
軽めのランチを、
懐かしい「ライオン」で済ませ、
ウィンドショッピングをしていたとき、
電話が鳴った。

本当にめずらしい人からだった。
その人は、
今、品川だからすぐに行くと言って、
あっという間に銀座にやってきた。
これからどうする?と聞かれ、
何故か、映画に行くとは言えず、
別に…と答えた。

そのとき突然、
銀河観音を描いている女性画家が、
たしか個展を
銀座でやっていることを思い出し、
その人を誘って、
出かけることとなった。

個展は、銀座の「エルメス」のそばの
一等地で開かれていて、
何とも言えないスピリチュアルな世界が
そこにはあった。
彼女の絵からかもし出される
優しいオーラに、
きている人は、くぎ付けとなっていた。

もうとっくに、映画の始まる時間は過ぎていて、
本当に何の予定もなくなり、
今度は、その人に、
ギリシャ人によるギリシャ哲学の
レクチャーがあるけれど、
行ってみる?とたずねた。

おととい、ギリシャのアーティストと
バーで出会い、
彼がこの日のために年に一回日本に来て、
仕事とはまったく別で、
無料でレクチャーをすることを聞いていた。
彼の絵に少し感動を覚えていた私は、
行けたら行こうぐらいの
気持ちではいたので、
私のこの日の予定の中では
未定になっていた。

品川から電話をしてきたその人は、
御茶ノ水博士みたいな髪の毛を
大きく揺さぶりながら、
「はい、行きましょう」
と、答えてきた。
本当に大丈夫かな?
誘ったけれど、どんな内容か分からないし、
この人、本当に興味あるのかと、
半信半疑でいた。

そのレクチャーは、夜7時から2時間で、
もうすでに、たくさんの人が座っていた。
おととい出会ったギリシャ人は、
信じられないほど上手な日本語で、
ギリシャ哲学を話していた。
宗教とも違うし、
私の仕事に近い精神分析の世界を
話していた。

レクチャーが終わって、
これまた、スピリチュアルな世界の中で、
サイコセラピストでもある彼の話は、
正直、勉強になったと思えた。
私の、治療を目的とするカウンセリングと、
サイコロジーの世界は似ていて、
自分の中に、今までにない感覚が、
注入されたような気持ちになった。
人のレクチャーを聞くことは、
たしかに、良い刺激となっていた。

レクチャーが終わり、その会場で、
ギリシャ人ともその人とも別れた。

その日、一日を思い起こせば、
とにかく、何かに導かれていたような、
自分の意図としないところで、
スピリチュアル的な世界へと
勝手に動かされているような気がして、
不思議な日だった。

「偶然はこの世にはなく、
すべて必然である」

ギリシャ人の言葉が
ぐるぐると頭の中をかけめぐり、
忘れられない日となった。

御茶ノ水博士からの電話も、
銀河観音も、
この日のレクチャーも、
映画を観ようとしていたにも関わらず、
すべて、最初から決められていたことのように
感じずにはいられなかった。
もう夏は終わったというのに、
少し涼しくなるような感覚になった。

人は時に、意図しないところで、
何かに導かれることが
あるのかもしれない。
悪い予感は何もなく、
とても新鮮な導かれ方だと思った。

私は、生まれて初めてかもしれない、
何か大きな力で守られている気がした。
おもしろい体験だった。

投稿者 椎名 あつ子 : 12:59

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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