2009年12月アーカイブ

2009年12月28日

深祈

今年、最後の日曜日。
箱根神社に出かけた。

元旦に向けて、神社の境内では、
きれいに掃除をしている人々の
風景が見られた。
これから、たくさんの人の参拝に備えてか、
静かな空間が、そこにはあった。
太くおごそかな、神聖な杉の木は、
年末でもお正月でも、
何も変わらない姿でそびえ立ち、
人々を受け入れていた。

祈祷の部屋には、
白い布の服を着て、
大きく体全身に響く
太鼓の音を聞きながら、
手を合わせて祈った。
無心に祈った。

今日まで、ここまで、
生きてこれた私の時間に感謝した。
そして、来年からの私の時間を、
すべてどんな時も、
おごそかに、謙虚に、
受け入れることのできる心を持てるよう、
祈った。

来年の春、10歳の誕生日を迎える、
ここ横浜心理ケアセンターが、
ここに通ってきてくださっている
すべての人に、
安定を平安を導くことのできる
空間であり続けることが
できるように祈った。

私の中での、長い長い祈りは、
私の中で、大きな、新たな
決意となっていった。

私から、人々に発信されることば、
ひとつひとつに、
どうか、優しさと、安心と、愛情が、
いつも在り続けますように。
そして、私自身、
努力と、忍耐と、
決断力と、誠実さとを、
持ち続けられますように。

来年もまた、そのためにも、
新しい気持ちで、
再びしっかりと歩き出そう。
この、深く強い思いが、
杉の木よりも高く、
空まで届きますように。

ここに来てくださっている人たちへ、
私を見守ってくれている家族へ、
私を理解してくれている友人たちへ、
私を支えてくれているスタッフへ、
そして、ここの仕事を助けてくださっている
さまざまな人たちへ、
心からの感謝の気持ちを込めて、
今年も1年、ありがとうございました。
来年も、10歳になる、
ここ、横浜心理ケアセンターと、
私とスタッフ一同、
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

今年も、あと少しの中で、
どうか皆様の上に、
良い年の終わりの時間と空間が与えられ、
来年が、少しでも、
今年よりも良い年でありますことを
祈るとともに、
そのために私たちができることの
努力をしたいと思っております。

Enjoy the rest of your year.

良いお年をお過ごしください。

投稿者 椎名 あつ子 : 12:01 

2009年12月11日

彼女

生きるとは、生きているということ。

生きているとは、温かいということ。
生きているとは、感じるということ。
生きているとは、涙が流れるということ。
生きているとは、笑うということ。
生きているとは、悲しくつらいということ。

そして、
生きているとは、死んでいないということ。
生きているとは、ここにいるということ。

ノートに書きなぐりながら、
涙が止まらなくなった。

彼女は、あと300日程の命。

生きるとは、
いつか死ぬということを受け止めること。

彼女はすべての治療を受入れ、
希望を持ち続け、
奇蹟を信じ続け、
そして、
最期の日をも受け入れている。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:28 

2009年12月03日

ジュリエット・グレコ

彼女に再び会うために、
黒のドレープシャツを着た。
昔、社会人になった頃、
一度、両親と観にいった
あの美しい女性。
フランスのシャンソン歌手、
ジュリエット・グレコ。

彼女はいつも舞台で、
長い黒のドレスを着る。
82歳になる彼女は、
今日も、少し腰の曲がった体に、
黒の長いドレスをまとい、
登場した。
彼女のドレスは、
写真でも、CDジャケットでも、
喪服のように見える。
悲しみの象徴のようだと思った。

レジスタンスの闘士だった母が
逮捕された後、
姉とグレコは、刑務所に入れられ、
のちに釈放された後、
演劇の勉強を始める。
彼女は、パリのサン・ジェルマン・デプレで
サルトル派にかかわり、
実存主義をとなえ、
歌を歌い始めた。
そういった過去の影響も大きいのか、
グレコの声は深く、
ひそむ影に向かって叫ぶように、
太い声の中に
凛とした声が含まれていて、
心や体の中から
熱くなるものを感じる
体の芯から涙が出てくるような
感覚におちいる。

広い舞台の中心に、
ライトが彼女だけを照らし、
黒のドレスの小さな体の
グレコだけが立ち続け、
歌い続けた。
彼女は、休むこともせず、
1時間40分、20曲を、
すべて歌い続けた。

82歳。
このエネルギーは、
私たちにも十分にそそがれた。

「行かないで」では、
両手を広げ、
1本1本の指が小刻みに震える中、
彼女はまっすぐ、
前をじっと見つめていた。
一人芝居を観ているかのようで、
彼女のフランス語は、
私たちと同じ心の
ことばとなっていた。

本当の愛を知っているから歌える
彼女の激しくも苦しい愛の歌を、
私は、聞き続ける中で、
愛とは何か、
再び、これからも、
考えていこうと思った。

グレコのコンサートが終わったあと、
みなとみらいのクリスマスツリーが、
今年初めて、点灯した。
愛の光が、
輝いているように見えた。

投稿者 椎名 あつ子 : 13:44 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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