2012年01月23日

母の誕生日だった。

75歳を過ぎた頃から、彼女はよく、
「死」について話すようになった。

「あと何年、生きていけるのかしら」
「あと10年は無理よね」
「その頃、私はいるかしら」

など、同年代の芸能人たちが
亡くなっていくのを見るたび、
悲しそうに、切なそうに、
ポツポツと言いはじめる。

そしてまた、少しだるかったり、
風邪をひいたり、
胃がムカムカしたりするたび、
重い病気になったのだと思い込み、
一気に元気がなくなってしまうのだ。

そんな母を見るたび、
人は老いていくのだと、実感する。
そして、老いていくということは、
必ず、死というものが目の前にあり、
それを毎日のように意識せずには
いられなくなるものなのだということを感じた。

そんな母に、母の大好きなラムが
たくさん入った、
フルーツケーキを焼き、
ネイルアートの券をプレゼントした。

「おしゃれできれいな母へ
 心も体も大切にして
 ずっと私の側にいてね」

2~3日後、母からお礼の電話がきた。

「病院の看護師さんが、
 あら、すてきなネイルね。
 ウキウキするでしょ。
 って、いってくれたの。
 毎日、鏡で指を見ているの。
 あー、すてき!!って思うわ。
 ありがとう」

75歳を過ぎた母だけど、
女性として美しく、
かわいらしさを忘れずにいるということは、
心をほっとさせてくれるし、
とても大切なことだと伝えたかった。

ずーっと昔、私が子どもの頃、
母は、私にたくさんのことを強制し、
従わせようとする人だった。
たくさんのことを指示され、
そんな母が、昔は嫌いだった。

今、あれから何十年も経ち、
母は、私が保護するべき人となっていった。

母を守ることが、
私の生き方のひとつとなっていることを
あらためて感じた日だった。

投稿者 椎名 あつ子 : 20:54

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

月別アーカイブ

カレンダー

2012年1月
« 12月   2月 »
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

オススメ