2023年08月アーカイブ
2023年08月30日
名前
初診で医者に行くと、「いつも何の薬を飲まれていますか?」と問われ
(お薬手帳があればよいのですが) なかなか名前が出てこないことがあります。
薬の名前って結構難しいものが多いですよね。
しかも今ではジェネリックが多く出ているので、なお複雑になっている気がします。
薬の名前が難しい理由の一つは
処方する際に同じような発音で違う薬と間違わないように
他にはない固有の名称を考える必要があるからと聞いたことがあります。
同時に、薬効や、その薬に込めた願いなども表したいとなると
結構ネーミングは大変なようです。
例えば抗コロナ治療薬「モルヌピラビル」は
北欧神話に登場する雷神が持つハンマー
「ミョルニル」にちなんで名づけられたとのこと。
またイーライリリー社の新しい糖尿病薬で
肥満の治療にも効くといわれる「マンジャロ」は
一説によると肥満を克服するのは山の「キリマンジャロ」に登るほど
難しいゴールだとの意味が込められているそうです (本当かな?)
願いを込めて名前を付ける…
私たちにとっては子供の名前を付ける時がその機会ではないでしょうか。
日本では漢字の組み合わせも考慮するとかなり選択肢が広がり、
親としてはまさに思案のしどころとなります。
漢字の意味というよりは音感で決める人もいるでしょうし
特に最近では当て字を使う方も多いと思います。
いずれにしても子供の将来を想いながら考えた末に
たった一つの名前を与える極めて重要な「儀式」といって良いと思います。
TVやニュース、又カウンセリングのカルテで
人の名前を見る時、 親御さんがどんな気持ちで名付けたのかなと
思いをはせることがよくあります。
その子どもの将来や人生を思い描きながら
親の願いや祈りを込めて一生懸命考えて付けた大切な「名前」
あれから何年か何十年かが過ぎ
その子どもは親をどう感じ、どう思って今過ごしているのでしょうか…
そしてまた親はあの頃のあの気持ちを忘れてしまってはいないでしょうか…
私はカウンセリングの中で親と子の様々な確執や、
すれ違いの状態を知る度に
親子になった最初のあの頃の事を想像したりします。
そしてまた私自身も子どもたちに名付けたあの頃の時代を思い返したりします。
私の子どもたちが今の私をどう思っているのかも気になりますが
私が母になったあの頃の初心を忘れないように
(年齢を重ねる度に記憶に対しては不安にもなりますが)
意識するようにしています。
名前を付けた日の思いを
大切に心の中に刻み続けていきたいと
今日は何故か思った日でもありました。
2023年08月22日
「無関心」という罪について
「愛の反対は憎しみではない。 無関心である」
これはハンガリー出身で、ホロコーストの生還者であり
1986年にノーベル平和賞を受賞したユダヤ人作家で
教育者のエリ・ヴィーゼル氏の言葉です。
さらに畳みかけるように
「芸術の反対は醜さではない。無関心である。
信仰の反対は異端ではなく、無関心である。
生の反対は死ではなく、無関心である」と彼の言葉は続きます。
強制収容所での凄惨な体験を経て
圧政や差別、暴力を糾弾し続けた彼の言葉には
生死をかけた重み、歴史的な意義があります。
しかし私たちの生活に置き換えてみると彼のメッセージは
ささやかな日々の暮らしの中にも思い当たることが多々ある気がしました。
例えばいじめ。
いじめられるのは直接の暴力にさらされ苦痛を伴いますが
恐ろしいのは周りの人たちが見て見ぬふりをすること。
味方かと思えば敵よりも冷淡な態度に遭遇し絶望感を味わうことになります。
そのいじめの体験は長い間心の中に傷として残り
その人の生活自体に負の影響を与えることにもなります。
また、家庭内での怒りの爆発や攻撃的な言葉や態度は
親(夫婦)たちが思っている以上に10年後、20年後の子どもたちの人生に
何かしらの問題が起きるきっかけとなってしまうことも少なくはありません。
私たちの日常の生活において馴れ合いやあきらめや
見過ごしが繰り返されていく中で
知らず知らずの間に大切なことが「無関心」になり
それが「ふつう」や「日常的」な物事として変換されていってしまう…。
「無関心」は「気にしないこと」とは違い
大きな罪であることなのかもしれません。
エリ・ヴィーゼル氏の言葉から「無関心から愛は生れない」と
考えさせられた日でもありました。
2023年08月15日
子育ての夫婦の共同作業とは
最近、幼児の子育てについて私も考えることが増えてきています。
子育てと仕事の両立の悩みでカウンセリングを受ける
ママさん達がたくさんいらっしゃいますが
毎日、時間との戦いの中でママさん達は大変な思いをされています。
昔と比べて御主人も子育てに参加して
夫婦共々がんばっている姿をよく見ますが、
それでも共働きの場合のママさん達の負担は大きすぎるものがあります。
在宅であったり時短で働いていたとしても
子どもが風邪をひいて熱が出たりお腹をこわしたりすれば、
すぐに保育園から連絡があり、すぐにお迎えに行かなくてはならなかったりしますし
病院に連れていっても何時間も待たされる場合もありますし
病児保育にお願いするにも予約が取りにくく高額であったりします。
そんな中で育児の雑誌に書いてあるような
バランスの良いかわいい離乳食の作り方や
月齢相応の育て方、遊び方などあらゆる情報が
ママさんたちをどれだけ苦しめているか考えさせられたりします。
「完璧」を目指すよりまず目の前のことを終わらせることだけをするにしても
日々大変な事の繰り返しであるのは当たり前の事なので
周りの人が「完璧」を求めようとしているママさん達に
もう少し優しく見守る言葉や認める言葉をかけていくことも
大切であるように感じています。
その中で御主人との関係にも考えさせられることが多々あります。
女性は子どもを産んだ途端にママになれるわけではなく
(これは男性にもいえることです)
出産後はホルモンのバランスも崩れやすくなっていますし
特にはじめての子育ては何もかもがわからないことだらけで
幼児の子育ては命にも関わる重大なこともあるので
気が休まることもなく、毎日緊張と焦りと
不安とイライラなどがあふれていて
なかなか気持ちのコントロールはできない時期でもあります。
もちろんパパさん達もはじめての子どもには混乱しっぱなしで
オロオロしてしまうたびに奥さんに怒られたり責められたりで
逆ギレしたくなることもあると思います。
経済的にも思っている以上に負担になっていたり
パパとして一生懸命やっているつもりでも
認めてもらうことの少なさに
怒りと不信感を持ってしまうこともあると思います。
夫婦のはじめての乗り越えるべき共同作業は
誰もが大きな壁でもあります。
ただ、共同作業の中で意見が合わないことでお互いが疲れ過ぎてしまい
離婚へと進んでしまうご夫婦が少なくはないのも事実です。
夫婦の信頼がなくなってしまった時に
「この夫婦関係が続くのであれば…
子どものためにも別れた方がいいのでは…」
という言葉も数多く聞きます。
「本当に子どものために離婚が必要なの?」
そんなことを毎回考えながらも若い二人の苦しみや辛さを
目の当たりにすることもよくあります。
そしてそんな時、心の中で思うことは
完璧なパパやママにもならなくていいから
失敗を重ねながら、転びながらも相手への言葉を心の中で修正しつつ
謝ったり、ありがとうを付け加えたりしていけたら…
何年後かの家族の形に平和があることを信じていただくために
お手伝いできることは何なのか…
先日も…そんな事を考えた日でした。
2023年08月01日
「きれいごと」と「美しいこと」
私たち日本人は年齢をとても気にする民族であると思う事が日々よくあります。
新聞や雑誌やTVなどで誰かの名前が出る時には
ほとんどの場合 (○○歲)と年齢が表記されているように思います。
報道の性格上、必要な時はやむを得ないと思いますが
全く不要に見える場合でもお決まりのように年齢が明記されます。
なぜそこまで私たちは年齢を気にするのでしょうか。
日本では学校でも1年先輩、後輩で付き合い方が全く異なったり
企業においても「年次」が強く意識されます。
言葉遣いにしても「タメロ」が使えるのは同期どうしのみ、
といったように人間関係において年齢や年次は
極めて重要な要因となっているように感じます。
年長者や先輩に敬意を払ったり、後輩をかわいがったりと
年齢を意識することの良さはもちろんありますが
「年齢の呪縛」がマイナスに働くことも増えている気がします。
例えば「アラサー」「アラフォー」といった言葉は
時として女性にプレッシャーをかけるような使い方をされることがあります。
「人生100年時代」 といわれる今ですから
昔のように、何歳までに学び終え、就職し、
何歳までに結婚、何歳で引退と型にはまらず、
望めばまた学びなおし、働き続ける。
そして 結婚の形もまた変わっていくのが自然かもしれません。
欧米では年齢による差別は格段に少ないように感じますし
男女や同性との関わり方も結婚などという形に
とらわれていない場合も多いですし
また、子どものいない場合でも
アダプテッドチャイルド(養子)という形に
順応であったりしています。
私たち日本でも、
自分自身や他者に対して「普通」という枠にとわられず
もう少し優しく広い視野でお互いがお互いを尊敬しあえれば
もっとみんなが生きづらさから解放されるのに…と思ったりします。
もちろんそれは「きれいごと」なのかもしれませんが
人種、性別、年齢、学歴、職歴、家族構成などに惑わされないで
それぞれが様々な可能性や役割があると信じて
自信を持って生きたいと思います。
それが「きれいごと」ではなく「美しいこと」だと思った日でした。
プロフィール
2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。
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