2024年01月26日

船の旅の終わりに

横浜中華街にある老舗のバーレストラン
「ウィンドジャマー」がもうすぐ創業51年の幕を下ろします。

このお店は船体をイメージしていて
ジャズの生演奏を聴きながら
美味しい数々のオリジナルカクテルや
ピザや大きな大きな手作りハンバーガーが
食べられる場所としても有名な所でした。

2階建ての広く重厚感のある木の船内での時間は
私にとってとっても特別でした。

平日の日は1階の観光客の多い船内ではなく
2階の静かな船内が私は居心地が良く
大好きでよく出かけていました。
2階にはNさんというクルーがいつもいらっしゃって
彼はいつも礼儀正しく、物静かでありながらも
立ち振る舞いにプロの姿勢が感じられ
まさにフランスのギャルソンのような人でした。

ウインドジャマーは私にとっては
いつも近くにある船で乗りたくなったらいつでも行ける存在でした。

でもコロナになりお店が休業している時期も重なり
気づいたらだんだん行かなくなってしまっていました。

久しぶりに昨年の夏には再び出向いて行きましたが、
2階の船内はクローズとなり1階だけとなり
私にとっての大好きな静かな空間がなくなり
Nさんとの会話もなかなかできなくなって
淋しい気持ちのまま時間が過ぎていってしまいました。

そして昨年12月に
突然「ウインドジャマーの航海を終える」という
閉店のお知らせを知りました。
いつでも行けると思っていた自分に対して
大きな後悔をしました。

閉店間近の店の前には
最後に生演奏を聴きながら
オリジナルカウテルと食事をしたい人たちが
たくさんたくさん列に並んでいました。
2時間待ちということで、
私はその光景に戸惑いながら列を外れて
お店の横の入り口辺りでNさんに会えないかと思いながら待っていました。

30分程してNさんがひょっこりたばこを吸いに外に出てきました。

私はNさんに近づいて泣きそうになりながら言いました。
「長い間お疲れ様でした。一度最後にお別れを言いたくて。
お会いできて良かったです。本当にたくさんありがとうございました。」
私とNさんはハグしあいながら何度も握手をして別れました。

Nさんとはいつかどこかで、ばったり会うことがあるのかもしれないし
もしかしたら、もう会うこともないのかもしれません。

ただジャズの曲が静かに流れる2階の船内で食べた
ラムチョップの味
アンチョビピザの味
そしてNさんと話したささやかな時間。

私の癒やされた空間と時間が
たしかにそこにあったこと…
まさか、こんな別れが突然のように訪れるとは思っていなかったけれど
長い間の思い出はずーっと、ずーっと私の心の中に残ることとなっていくでしょう。

ウインドジャマー
素敵な船の旅の時間を
心からありがとう。
そしてクルーのみなさんもお疲れ様でした。
またどこかでお会いできたなら…
またね…

投稿者 椎名 あつ子 : 14:40

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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