2013年01月17日

雪の日

成人式は大雪ふぶきだった。

20歳の下の娘は朝から
着付けがあり、私も一緒に
つきそうこととなっていた。

着物に着がえ終わった娘は
美しすぎて、私の娘とは
思えない程だった。

あの日から20年、
思い出せない程の物語が
私と娘の間にはある。

湾岸戦争後、夫の仕事の関係で
赴任したアラブの国で、
下の娘の妊娠期間をすごした私は
妊娠7ヶ月目に出血をしてしまい、
3歳の上の娘を連れて
日本に帰国した。

無事出産した娘と上の子を連れて
再びアラブの国に戻ったのは、
下の娘がまだ3ヶ月の時だった。

アラブの国に住みながら、
夫の仕事関係のお客様接待に
追われる私の代わりに、
何もできないインド人のメイドに
二人の娘を預けなくてはいけなかった。

はじめての異国で、
生活や環境やことばの壁に
混乱しながらの私の子育ては、
決して彼女たちにいい環境とは
いえなかったと、今思い出しても
胸が痛くなる。

日本に帰ってきてから間もなく
仕事をはじめた私は、ほとんど
母に子育てをまかせていたので
どれだけ彼女たちに淋しい思いを
させたかと思うと、
何度も謝りたくなってしまう。

何年か前に、下の娘に
「ママはいつもいてほしい時に
いてくれかったじゃない」
といわれたことがある。

私は子どもに対しては、
最大な無条件な愛を
いつも意識はしていたけれど
毎日が仕事中心で帰りも遅く、
ゆっくりと時間をかけてあげては
いなかったと思う。

そんな、普通とは違った歴史の中でも、
彼女は素直に明るい素敵な子と
成長してくれた。

そして成人式のその日、
彼女は美しい着物姿を
私にプレゼントしてくれた。

「ママ、ありがとう」
娘のことばに心から
返したかったことば、
「こちらこそありがとう、本当に。」

天から降る白い大きな
たくさんの雪は、
決して忘れない最大の愛の形に
私は感じた。

その日、寒さの中でも心の中は
本当にあたたかい日となっていた。

投稿者 椎名 あつ子 : 15:10

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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