2008年09月アーカイブ
2008年09月29日
秋の夜
秋は、物思いにふける
季節なのかもしれない。
北海道から、
横浜トリエンナーレのため訪れた
画家さんと、その仲間たちと、
食事をした。
お酒もほどよく入って、
彼は彼の今の仕事について
話し始めてくれた。
30代後半の彼は、
世界中の「人の顔」を描く
人物画家だ。
彼は言う。
人の顔は、その人に
どれだけ似ているかが問題ではなく、
一生のこる作品だからこそ、
その人の顔の
いちばんいい表情をとらえて
描くことが、大切なのだと。
それが、その人への誠意なのだと。
でも、たとえ誠意を持って、
時間をかけて一生懸命描いても、
時に、相手に認めてもらえず、
こんな作品いらないと
返されたこともあったらしい。
自分はその時、傷付き、悩み、
人物画家として不安になるけれど、
それは、自分が相手に認めてもらうことを
期待しているからだと思うと。
そんな時、彼は、
認められない気持ちを僕に伝えてくれて
ありがとうと思う。
とのことだった。
長い長い、秋の夜だった。
私は、彼の大きな体から発する
エネルギーに負けそうになりながらも、
彼の一言一言に聞き入っていた。
自分自身と向き合うことは、
こういうことなのかもしれないと、
考えさせられた、
そんな夜だった。
2008年09月26日
子守唄
ママ、もう一度歌ってよ、
子守唄。
私を寝かしつけた。
「ねんねんころりよ…」
ママは歌ってくれた。
ずっと、私が寝たふりをするまで。
あの時、あなたも若かった。
今の私よりも若かった。
私は、小さな子どもだったけど、
ママが早く私を
寝かせつけたかったことは
知ってるよ。
私はいい子になって、
寝たふりをしてたよ。
ママ、私は大きくなりすぎて、
あの時のママの悲しみが
分かりすぎるほど
分かる歳になってしまったよ。
こんなの、いやだよ。
ママ、もう一度、
子守唄、歌ってよ。
2008年09月24日
雨 - つまりそんなこと
日曜日の午後は、車のフロントガラスが
雨で見えないほどで、
こわいドライブを体験しながら
実家から帰宅した。
ホッとしたくて、
行きつけのカフェに立ち寄れば、
プロジェクターから
「雨に唄えば」の
古い名画が流れていた。
コメディで、
軽やかなジーン・ケリーの踊りは、
その日の時間と空間を
飛び越えてワープして、
私の目に飛び込んできた。
そんな中、テーブルが一緒になった
あるラジオ製作者の人の言葉が
重なった。
「感じる心がなければ、
言葉はむなしい道具のような
ものでしかない。」
ラジオのリスナーを感動させるには、
見えない情景を相手に
どう想像させて伝えていくかという能力が
必要となるらしい。
私は、その人に、
どんなに今日のドライブが
恐怖との闘いであったかを
伝えてみようかと思い、やめた。
きっと、そんなことは、今の時間、
つまらないことだから。
でも人は、その時、
伝えたい言葉がある。
分かってもらいたい
状況がある。
私は、今日の雨の恐ろしさと激しさを、
何故か、バカげているけれど、
誰かに伝えたかった。
人って、誰でも、
くだらないことを伝えたくなる、
そんな日って、あっていいと思ったりした。
本当に今日の雨は、
この世の終わりがくるような
激しい雨だった。
私は、とても怖かった。
逃げ出したかった。
つまり、それだけなんだけど。
2008年09月22日
男と女
あなたは今、幸せなのだろうか。
あなたは、死ぬんだろうか。
あなたは、選んだのだろうか、
この道を。
いつ死んでもおかしくない環境を
選んだのはあなた。
私はもう、すごい昔から、
つらいから見ないようにした。
あなたの人生と、私の人生、
別々であることを知って、
追いかけないことにした。
あなたは、私を守れない。
そう、そんな2人のドラマがあることを、
あなたは知っているかな。
そんな、長い長い男女のドラマが、
時に、カウンセリングという場で
お互いがむき出しになり、
そして、結論が出ないことを
結論とする形がある。
男と女の、悲しくも美しいドラマ。
2008年09月19日
Time to say good-bye
何故、人は、
優しいメロディーに心ひかれ、
涙を流すのだろう。
ある女の子は、何ヶ月間も悩み続け、
愛する人に別れを告げた。
そして、やっと別れを告げたあと、
相手から攻撃をし続けられ、
自分を責めながらも
相手の情けない執着の感情に絶望し、
そして今、彼から解放されたことに、
少しの喜びと自由をかみしめていた。
そう、もう自由。
私は、苦しみながらも、
解放からくる自由を
手に入れた姿を見守りながら、
2年前の今頃の自分を想い出した。
もう2年なのか、
まだ、2年なのか。
あの頃、ある曲を聴いて、
泣いた。
私は静かに、声を押し殺して
嗚咽した。
悔しさと悲しみと、
苦しみと憎しみと、
そして愛と、
そんなあらゆる感情を
いっぺんに感じながら、
ある人を想い続けた。
男女の恋以上の誓いが、
私の中にあった。
でも、気付かなかった。
終わろうとしていたことを。
2年が経ち、私は思う。
「あなたは元気ですか?」
別れが辛すぎて、別れのとき、
「いつでもまた、帰ってきてね」
と伝えた言葉の偽りを
自分で感じながらも、
あの時、私は、そう言いたかった。
別れが辛すぎた。
2年の時が経ち、今は分かる。
今の私に本当は誰が必要なのか。
私を、日々支えてくれている人は
誰なのか。
あの人が去って、
そして今、あなたがいる。
そう、すべて人生は、
そういうこと。
人とは、そうやって、
また出会えていくもの。
別れは出会うこと。
恋に別れを告げた若い子と、
一緒の時間の中で共有したこと。
別れは、自由になるということ。
プロフィール
2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。
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