2013年09月14日

祈

行きつけのバーの顔見知りの
素敵なダンディーな方が、
突然亡くなった。
心筋梗塞だったと聞いた。

自由奔放な方で、
４度目の結婚をしたばかりの、
72歳だったらしい。

彼の生き様や過去は何も知らず、
でもいつも会うと、
こんにちは、さようなら、
とあいさつをしていた人だった。

彼とは、何年か前、カウンターで
となり合わせになり、
ふたりで飲んだことがあった。
そのとき、私は仕事について悩み、
このままでいいのか喘いでいたときだった。

彼は、私の
「どうしたらいいのか混乱状態です」
の言葉に、煙草を吸いながら、
遠くを見る目で答えた。

「経営者として、
　自営を始めたということは、
　凧を揚げたということ。
　それはどんなときも、
　きちんとひもを持って揚げ続けるんだ。
　風が吹いても風がなくても、
　しっかりとひもを持って揚げ続ける。
　大空に向かって揚げ続けるんだ。
　ひもを引くということは、
　できないんだよ。
　揚げたらずっと、揚げ続けるんだよ。」

重く厳しい言葉だった。
その日から、彼にその店で
偶然会うことが喜びとなっていった。

突然すぎる死に、
まだ信じられない思いと淋しさが、
ずんと心の中に残っている。
ただ、彼のあの言葉は、
私の中で生き続けていく。

ありがとうございました。
そして、永遠に安らかに。
祈。

投稿者 椎名 あつ子 : 11:37

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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