2008年10月13日

自由と孤独

親子のカウンセリングで、最近、
「自立」という言葉が気になっている。

親は、子どもが成人し始めると、
急に頻繁に自立という言葉を
使い始めている気がする。

「ちゃんとした会社に就職して
自立しなさい。」

「もうそろそろ結婚して、
自立しなさい。」 etc…

子どもの数が減り、
一人っ子も増えてきた中で、
親は、小さい時から子どもに期待し、
教育にも熱心になり、お金をかけ、
塾や、お稽古や、
学校は優秀な私立に入れ、
大切に育てる。
手をかけられた子どもは、
自立心ということよりも、
大人の希望に沿った生き方を学ぶ。

ところが、ある日突然、
学生生活が終わる頃、
自立を叩き込まれる。

学校を出してやったんだから、
もう大人になったのだから、
自分で働きなさいねと。

当たり前のことではあるし、
親もいつまでも働いていられないし、
親も年をとるし、
定年もやってくる。
子どもは子どもで生きてくれないと、
それは困る。
ただ、自立ができない成人した子どもたちは、
親に、ある日突然、
見捨てられた気持ちになっている場合が
少なくない。

つまり、この子たちは、
子どもの頃に、子どもらしい自由を
与えられていない。
自立は、ある意味、
親から自由になる一歩であることにも
気付いていない。
自由の意味を知らない。
そして、自由になるとは、
孤独も一緒に付いてくることも
教わっていない。

成人した子どもは、
自分の道を好きに生きろといわれても、
好きなことも分からない。
何が自分にとって自由で、
好きな道か、分からない。
だから、好きな仕事も、好きな人も、
どんなことなのか分からない。

つまり、自分のことが分からないまま
大人になってしまった…
ということかもしれない。

その人たちだけを責められない現実を
目の前にしていると、
自立や自由を、どう受け止め、
考えていけばいいのか、
そして、どう伝えればいいのか、
大きな課題でもある。

投稿者 椎名 あつ子 : 15:21

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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