2009年01月19日

花束

一通の手紙が来た。
かわいい封筒を開けると、
懐かしい文字と同時に、
その子の顔が浮かび上がった。

初めて彼女に会ったのは10年前で、
彼女が10代の頃だった。
お人形のように
かわいらしい小さな顔と、細い体と、
そして大きな瞳が忘れられない子で、
青春期の彼女は、
若い恋に苦しみ、悩み、
怒りと共に悲しみを隠せず
混乱していた時だった。
それから、たくさんの、
彼女の過去の心の問題が
膿のように出始めた。

しばらくして彼女は、
突然、結婚した。
あぶなっかしい結婚に、
不安と心配を持ちつつも、
飛び立とうとしている彼女を
そっと見送った。

あれから、あっという間に
月日は流れた。

彼女の10年は、苦しみと不安と、
そして大人のずるさと残酷さの中で、
耐え続けた時間だった。

彼女は、離婚という決断の報告をしに、
久しぶりに会いに来てくれた。
彼女は、かわいいお人形から、
立派な凛とした大人へと成長し、
変化していた。
何も恐れない、そして諦めない、
美しい女性へと動き出していた。

その彼女から、私との想い出、
そして私の健康を気遣う言葉が並ぶ手紙が、
年賀状の代わりに来た。

本当に嬉しかった。
私の、カウンセラーとしての
ささやかな地味な人生に、
大きな花火が上がったような
感覚だった。

10年近く、忘れないでいてくれたこと、
そして彼女が、私を越えようとしていること、
ステキな関係だと感じた。

私は年をとっていくけれど、
まだまだ若い彼女は、
これから大きな花を咲かせていくだろう。

私は、これから、彼女のように、
過去を克服しようとしている人たちが、
今の彼女のように
大きく成長していく姿を見守れることに、
心から感謝する。

そして私も、私なりの花を
咲かせたいと思っている。
若い彼女のような人たちの花が、
大きな花びらを持つ白いカサブランカならば、
私は、小さな小花のかすみ草。
大きな花と、小さな小花は、
いつの日か、美しい花束と、
お互いの心の中でなっていく。
私はそれを、信じている。

投稿者 椎名 あつ子 : 11:52

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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