2010年05月10日

心の問題

先月、愛知県で起きた事件。

10年以上も自室に引きこもっていた
30歳の男性が、
家族5人を殺傷した。
ネット通販の支払いが
200万円をこえていて、
困った家族がとった行動が、
ネット契約をきることだった。
そのことで逆上した男性は、
小さな子どもまでも手にかけてしまった。

彼の唯一の社会が、ネットだった。

ネットの回線は、彼にとって、
生命線だったのかもしれない。

引きこもりに限らず、
こういった家族との
理解し合えない関係で起きる問題は、
ここセンターでも、日々、後を絶たない。
暴言であったり暴力であったり、
また、自分に向ける様々な自傷行為であったり。

ただ、その人たちは、
被害者でもあると、
私は思う。

社会から、地域から、世間から、
変わった目で見られたり、
放っておかれたり、
見捨てられた時間の蓄積は、
大きな被害であり、
弱者だと私は思う。

ただ、弱者であり、被害者であった人が、
今回の事件のように加害者へと変身するまでの、
何かしらの信号を、
誰が一番早く分かってあげるのか、
見つけ出す人がひとりでもいれば、
彼は毎日を、ネットにとらわれて生きなくても
よかったのではないかと思う。

また、家族がネットを切るという決断のほかに、
もっといい方法がないかを考え、
相談する場所、
病院であったり、カウンセラーであったり、
地域の相談支援の場所であったりを
探してみたりした結果だったのかを、
知りたいと思った。

「まだ、そこまでではないから、
様子を見よう」

といった、精神への偏見からくる
甘えの逃避を、
まわりの人たちがまず捨てて、
本人を救うために、
何人かのプロに相談してほしいと、
心から願う。

家庭内で困っている問題を
世間から隠して放置していても、
彼らの心の病は変わらないばかりか、
大きくなっていくのだから。

心の病は、
外科の手術のようにはいかない。
切ればなくなるのではない。
なぜなら、レントゲンにも写らず、
どこにあるのかも誰も知らない、
でも確かに存在する、
心の問題だから。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:59

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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