2007年08月01日

嵐の日

その日は、あるお店の
一周年のパーティーだった。
激しい雨と、
恐ろしい雷の音が
鳴り響いていた。
確かに、この店には
ふさわしい感じだった。

雨漏りがひとい店内には、
たくさんの、変わった人たちが集まり、
なかなか他では聞けない
ライブが行われていた。

50代から60代のミュージシャンが、
昔の曲「恋の季節」を
ニコニコと演奏していた。
深い歴史が刻まれた人生を
送ってきただろうと
思われる人たちの演奏には
力がある。
そして、ゆとりがある。

ローレックスも、高級車も、
家も、お金も、名声も、
たいしたことではなく、
お金では買えない
かっこよさがある。
お金で買えない生き方がある。

そんな曲の言葉が
胸に響いてきた。

それでも、この人たちの
ありのままの生き方に、
私はやはり、ついてはいけない
自分を感じた。
裸でも自信を持って
生きていけるような
精神は持っていないと感じた。

私は、恥ずかしくなった。
私は、孤独を感じた。
そして、帰りたくなった。
現実と理想のギャップを、
やはりどうしても埋められない私は、
つまらない人間に思えた。
私は、自分が小さなアリに思えた。

夜中の12時が過ぎ、
酔うことのできないまま、
明日のことを考え始め、
仕事モードの気分になった。

そう、私は、
私の居場所に帰ろう。
それが、私なのだから。

雨が止んで、
濡れたアスファルトが
暗い夜道に光って、
美しかった。

投稿者 椎名 あつ子 : 17:57

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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