マイウェイ 女性カウンセラーのプチ・エッセイ

生まれて初めて
クルーザーヨットに乗った。
桜が咲き始めたというのに、
その日は、凍えそうな寒さの上、
雨という生憎の天気。

それでも優雅な世界が
そこにはあった。

キッチンとスリーベッドルームが
下の階にはあり、
冷蔵庫やトイレはもちろうん、
ワインセラーまでも設置されていた。

海の上での生活は、
普通の人には手に入らない
未知の世界。
船のオーナーと、
オーナーに雇われているのか
4～5人のクルーが一緒になって、
連携を取りながら船は走り出す。

5時間にまで及ぶセイリングの時間は、
手が寒さのためかじかんで、
動かなくなりつつも、
あっという間だった。
もっと天気がよければ、
きっと、この世界は美しく、
格別なのだろうと思った。

でも何だか、私の身分には、
あまりにも不釣合いで、
ゲストで招待されているとはいえ、
何となく落ち着かない気持ちのまま
帰ってきた。

船のオーナーと、
船を操縦するクルー。
そこには、大きな社会的地位の差が
はっきりとあって、
まるで大会社の経営者と
従業員といったシステムを
感じてしまった。

私はやっぱり、小さなカヤックで、
自分で漕ぎながら海を感じていることが
合っている気がした。
その方が、うんと幸せだと思った。
人には人の幸せのレベルがあるのだと、
つくづく感じた。

海の季節になってきた中、
私は小さなカヤックから
大きなクルーザーヨットを
見上げる生き方でいいと、
何故か心から思った日だった。