2008年01月09日

昨年の暮れ、NHKの紅白を見ながら、
家族で年越しそばを食べた。
毎年変わらない行事のひとつだった。

ただ昨年は、母の体調がすぐれないため、
私の家に呼び寄せ、
一緒に紅白の歌番組を見た。

「こんなにゆっくり、
あなたの側で紅白を見たのは、
久しぶりね。」

母が突然、ポツリと言った。
確かに毎年、暮れはバタバタとしていて、
最初から最後までテレビを前にして
座って見ていたことは
なかったかもしれなかった。

そしてまた、しばらくして
母が言った。

「私は、あなたに
もっと優しくしてあげれば
よかったと思うの。
もっともっと、
信じてあげれば
よかったと思うの。」

思わず、横にいた母親を見た。
12月に入ってから、
風邪が長引き、食欲がなく、
体調が不安定な時であるとはいえ、
弱気になっている母を
しみじみと見た。

そんな時、
「千の風になって」が流れた。
初めて、この歌を嫌いになった。
つらい歌だなと思った。

また、母が話し出した。

「私は今でも、
亡くなった自分の母親を
許せてないの。
だからあなたも、
私を許せないことは
あるだろうなと思うの。」

まるで最期のことばのような気がして、
思わず、私は大声で話した。

「ママ、そんなことないわよ。
それもみんな、
時代の流れなのよ。
人は必ず、
人を許せるときが
来るものよ。」

娘である私は、いつの日か、
母親の母親になっていた。

(この人を、守り続けよう。
この人が幸せであるために。)

これが、昨年の暮れに心から思った、
私の誓いだった。

今年になって、仕事が再開し始め、
母と会えない日が、また始まった。
そんな中、今日、母に電話をした。

「どう?元気?」

なんだかホッとした。
その時の私は、
また、娘に戻っていた。

やはり私は、この人の娘で
ずっといたいと祈る思いで、
母の声を感じていた。

投稿者 椎名 あつ子 : 12:25

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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