2006年11月アーカイブ

2006年11月29日

ハーレー883

6年前、突然バイクの免許を取ろうと思い、
決断した。

その頃は、将来の不安を抱え、
仕事にもいまいち自信がもてなくなっていた。
自分がどこに向かおうとしているのか、
このまま進んでいいのか分からなくて、
ひざをかかえたままうつむいている自分が
そこにはいた。

そんな時、ふと
「風を感じてみたい。
 走ってみたい。」

それが、バイク免許を取る理由だった。
それだけだった。

自転車にさえ、上手く乗れない私にとって、
はじめての大きな大きな挑戦だった。
自動車学校の教官には、あきらめるようにすすめられ、
それでもあきらめ切れない私は、半年以上が過ぎ、
それから、中型、大型と取り続けた。
若くはない私にとって、大変な苦しみだった。
2年近くはかかった。
とてつもない時間とお金がかかった。

中型の免許合格発表で名前が呼ばれたとき、
教官や他の人たちの前で、
子どものように泣いた。
ワンワン泣いた。

できっこないと思っていたことへの
はじめての挑戦に勝った。
自分に勝つことの意味が、
はじめて形となり、共感できた時だった。

あれから6年もの月日が経ち、
私は一度もバイクにまたがっていない。
やはり、街を走ることはリスクが大き過ぎた。
もう乗れないと思うし、
やはり事故を恐れて乗れていない。
風を切って走るなんて、
もう遠い憧れとなっている。

でも、
 (私でも、免許は取れたんだよね。)
確かな事実が、今の私の、
ほんの少しの自信となって存在している。

人に不可能なことはない。
と、今でも時々思うのは、
あの頃のボロボロの私が愛しいから。

乗りたかったバイク。
ハーレー883。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:13 

2006年11月27日

講演会

明日の午前中は、
「子どものSOSが聴こえますか」
の2回目の講演が、野毛地区センターであります。

今、ここのところ毎日のように、
子どもの問題について、
マスコミでもニュースでも騒がれすぎていて、
大人たちのあらゆる様々な意見や考えが、
まとまりのない状態で動いている中、
私は、この講演の2時間がどうであるべきなのか、
考えて、悩んで、混乱して、
やはりまとまらず、
また考えて、悩んで、
とうとう明日になりました。

ひとりのカウンセラーの考えを話す時間ではなく、
ひとりのカウンセラーが、毎日見ている、
今の子どもたちの現場を話したいと思っています。
「これが本当の現実なのです」と。

そして、その現実から目をそらさずに、
誰のせいにするのでもなく、
一緒に考えて、子どものための
これからの行動の仕方を
探したいと思っています。

明日は、どうぞよろしくお願い致します。

当日でも、興味がある方、
いらしてみてください。

投稿者 椎名 あつ子 : 13:11 

2006年11月24日

働く女性

働く女性についてのインタビューを受けた。
前回はストレスについて話し、
今回は
「仕事で磨かれる女、
 男で伸びる女」
についてだった。
今月の末に「月間SAY」から発表される。

働く女性について改めて考えてみると、
あまりにも多くの課題が芋づるのように、
ズルズルと出てきてしまう。

昔、20代の私も、SAYの読者のように
OLをしていた時代があった。

私の回りの男性は高学歴が勢揃いで、
社会からも親からも女たちからも
全てから認められているかのように見えた。
そこは、今は亡き、某銀行。

そこで働く女性は、
有名デザイナーの美しい制服を着、
お茶くみ兼コピー取りプラス事務、
そして笑顔。
これが大切な仕事だった。

仕立てのいいスーツとブランドが分かるネクタイ、
自信にあふれた態度、
またはあふれすぎてこぼれてしまっているような上司に、
いつもきちんと品よく挨拶ができるかわいい女性が
必要だった。

あれから時が流れ、
あの頃の銀行のスタイルは壊れ始めた。
他の会社のスタイルも変わり、
働く女性も変わり始めている。

笑顔だけでは認められず、
責任が問われ、
個性が必要となり、
また資格を求められ、
結婚も考えさせられ、
子どもを産む時期もあり、
会社のシステムには甘えられず、
将来への不安は積み重なるばかり。

たくさんの悩みを持ちながらも、
私たち働く女性は、
男たちをやはり求めていると思う。
理解されたいと考える。

働く私自身も、そう。

「僕がいるから、すべて大丈夫だよ」

心からのこの言葉を、
悲しいかな、永遠に待っている私がいたりする。

結婚している女性も、
していない女性も、
するつもりのない女性も、
結婚したい女性も、
女性にとっての異性とは、
ここ地球上ではやはり男でしかなく、
意識せざるを得ないのかなと、
正直、思っている。

男と女の問題は、
やはり、私のテーマでもあるのかもしれない…ね。

投稿者 椎名 あつ子 : 14:36 

2006年11月22日

中上健次

中上健次のエッセイ集を古本屋で見つけた。
たくさんある本の中から、
何故かこの一冊が気になり、手に取った。

「青春、ボーダー編」

細かい字が二段になって敷き詰められ、
厚い本だった。
すでに5年前に出た本で、
彼の残したすべてのエッセイを集大成していて、
彼の死後10年後に出た本だった。

中上健次の小説は何冊か読んでいたけれど、
それは遠い記憶だった。
 まっとうに生きたい。
といい続けた彼が味わった青春は、
24歳で異父兄が自殺したことから始まり、
46歳でこの世を去るまで、
普通に考える人生とは程遠く、
複雑な家族関係を背負いながらも、
弟としての罰に苦しみもだえた日々だったらしい。

クリスマスのイルミネーションが
華やかに飾られた通りの本屋さんで、
こんなにもつらい、一人の人間の人生の本を、
何故買ってしまったのかなと
少し恐くなった。

かわいい絵本や、ステキな写真集も
たくさん並んでいたのに。

その日からこの本を読み始めた。

私が最近感じるのは、
日々、私のところに訪れるクライアントを思うとき、
中上健次が、特別に辛いのではないということ。

ある意味、彼のような人生の終わり方をしないために、
私は、私の中にある、あらゆる言葉で、
少しでも人の気持ちを救えたらと思っている。

それはもちろん、傲慢であってはならなくて、
謙虚すぎてもどこか偽りで、
とにかく私は、彼の46年間の残された言葉の意味を、
まず学びたいと思っている。

この本との出会いは、
私の足りなさを教えてくれるためであったのだと、
今は感じている。

投稿者 椎名 あつ子 : 10:58 

2006年11月20日

雨の日曜日

昨日の日曜日は、とても長い一日だった。

バッハの曲を聞きながら
遅めのブランチを食べ、
しばらくの間、まどろんだ気持ちのまま
ボーっとしていて、
再びベッドに入り込み、
規則正しすぎるバロックの音楽にすっかりやられ、
気づいたらまた、夢の中。

今週は何か、頭の中に小さな虫が1匹、
飛び続けているような感覚がとれず、
寝ても寝ても、頭の神経が疲れていた。

目がなんとなく覚めて、
頭の中の虫が、気づいたら消えていたため、
夕方、降りしきる雨と憂うつな寒さの中、
意味も目的もないドライブをした。
しばらく走ったら、あまりのバカバカしさに
一人いらだちを覚え、
1時間程して、やはりやることがなく、
なんとなく家に戻り、
再びベッドの中へ。

ひたすら駆け上がっても
果てしなく空に向かっている白い螺旋階段を
登り続けている夢を見た。

「あー。まったく何なのかしら!
 今日は夜の9時からライブに行くため
 チケットを取ってあるのに。
 行く気がしない。」
とぶつぶつ心の中で思いながらも、
寒く冷たい雨の中、ライブに行った。

今日は、何人もの知り合いが出ているから、
ライブを聞きに行かなくちゃ。
ただ、それだけの理由だった。

あふれかえる人の数、
むせ返るタバコの煙、
熱すぎる空間。

たけど、気づいたら、
リズムに合わせて踊っている私がいた。

大人のロックだった。
昔、よく聞いた曲だった。
なまめかしい色気の大人の男たちが、
おちゃめに、かっこよく、少年のような瞳で、
身体全体で生きていた。
若者に負けない情熱があふれていて、
スローなブルースには、鳥肌がたってきた。
なぜか泣きそうになった。

この時間が、特別であるためだったんだ。

さっきまでの気だるさの意味が分かった気がした。
切なくて、暇で、やるせなくて、退屈な時間は、
次の特別な何かのためにあるんだな。きっと。

私は今日、本当に心からそう思ったりした。

そんな、雨の日曜日。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:04 

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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