2006年11月22日

中上健次

中上健次のエッセイ集を古本屋で見つけた。
たくさんある本の中から、
何故かこの一冊が気になり、手に取った。

「青春、ボーダー編」

細かい字が二段になって敷き詰められ、
厚い本だった。
すでに5年前に出た本で、
彼の残したすべてのエッセイを集大成していて、
彼の死後10年後に出た本だった。

中上健次の小説は何冊か読んでいたけれど、
それは遠い記憶だった。
 まっとうに生きたい。
といい続けた彼が味わった青春は、
24歳で異父兄が自殺したことから始まり、
46歳でこの世を去るまで、
普通に考える人生とは程遠く、
複雑な家族関係を背負いながらも、
弟としての罰に苦しみもだえた日々だったらしい。

クリスマスのイルミネーションが
華やかに飾られた通りの本屋さんで、
こんなにもつらい、一人の人間の人生の本を、
何故買ってしまったのかなと
少し恐くなった。

かわいい絵本や、ステキな写真集も
たくさん並んでいたのに。

その日からこの本を読み始めた。

私が最近感じるのは、
日々、私のところに訪れるクライアントを思うとき、
中上健次が、特別に辛いのではないということ。

ある意味、彼のような人生の終わり方をしないために、
私は、私の中にある、あらゆる言葉で、
少しでも人の気持ちを救えたらと思っている。

それはもちろん、傲慢であってはならなくて、
謙虚すぎてもどこか偽りで、
とにかく私は、彼の46年間の残された言葉の意味を、
まず学びたいと思っている。

この本との出会いは、
私の足りなさを教えてくれるためであったのだと、
今は感じている。

投稿者 椎名 あつ子 : 10:58

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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