2007年11月02日

オペラ

6年ぶりの友達と会って、
食事をした。

彼女は長い間、
御主人の仕事に付き添って、
海外生活をしていて、
やっと10年以上ぶりに
日本に帰ってきた。
6年前は確か、
彼女が日本に一時帰国をして、
そのときに久しぶりに
会ったのだった。

彼女と離れていた10年間は、
住んでいた国の状況があり、
インターネットも手紙も
思うようにできず、
コンタクトを取れないできていた。

彼女はその日、
黄色の革のジャケットをはおり、
堂々と待ち合わせ場所に来た。
私たちは、何も言葉がないままに、
抱き合った。

「やっと会えたね」

そんな感情で一杯だった。

6年ぶりの割りに何の戸惑いもなく、
静かな落ち着いたレストランにもかかわらず、
恥ずかしげもなく笑いあった。
たくさん話した。

今、オペラのテノール歌手に
恋をしているということ。
将来は、小さなサロンで、
オペラを歌えるように
なりたいということ。
子どもたちが成長して、
どんどん離れていっているということ。
前世をみてもらって、
それなりに感動したということ。

バカらしい程の話を、
ただひたすら、
おかしくて、うなずいて、
聞いていた。
4時間もの時間が、
あっという間に流れ、
帰り際に、
「この後どうするの?」
と聞いてみた。

「これから、母のお見舞いに、
病院に行くの。
来月から老人ホームに
入ることになったのよ。」

明るい話題から、
とつぜん、現実となっていった
瞬間だった。

帰りの電車の中で、
彼女のお母さんを思い出していた。
彼女のお母さんも、
お洒落でかわいい人だった。

そういえば、6年前に会ったとき、
その母と分かり合えないで
悩んでいると話してくれたことを
思い出し、
この6年間、彼女も、
ひたすら苦しみながらも、
明るく生きてきたんだと思った。

10年間という時を、
夫のため、子どもたちのため、
そして老いていく母のために、
必死に生きてきた彼女が、
やっと見つけた生きがいが
オペラなんだと、
後になって感じてきた。

なるほど…ね。

何かつながった気がした。

きっと人は、
新しい何かと出会うとき、
必ず何かしらの理由があって
そこへと導かれていくのだろうと、
何となく感じた、
そんな日だった。

投稿者 椎名 あつ子 : 17:34

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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