2008年06月11日

流行

ある幼稚園児の男の子が、
お友達の集団に入れず、
ひとり孤立しているということを知り、
そのお母さんが、
息子さんのことで相談にいらした。

そのお母さんも人との会話に入れず、
人と接することが苦手ということで、
自分のせいで息子さんまでも
同じような性格になってしまったと、
後悔し苦しんでいる姿は、
まるで子羊がおびえているようだった。

何故、人との会話に入れないのかを
よくよく聞いていく中で
分かったことがいくつかあった。

ひとつは、会話に入れない理由に、
他の人たちの会話の内容が
理解できないということがあった。
息子さんの孤立も、
お友達との会話についていけないことが
原因であるようだった。

今度は、家の中での生活について聞いていくと、
テレビをほとんど見ない、
見る番組は、NHKのニュースか教育テレビで、
それ以外は見せないように
しているということが分かってきた。
つまり、今の世の中の情報からはずれ、
何が流行しているのか、
何が今、話題になっているのかを
全く、家族中が知らないといった状況が、
そこにはあった。

その子は、子ども番組のキャラクターも知らない。
お笑い番組のネタも全く分からない。
夫は流行を嫌い、
くだらないものと決め付けていて、
妻である彼女はそれに従って、
質素に静かに生活していた。

私は、流行を追うことと、
流行を知るということは、
違うと思っている。
流行は、知った上で、
自分が必要かどうか判断していく
ものであるという話をしていった。
情報が多く、また情報がどんどん
新しいものへと変化していく
現代社会に生きていく中で、
ある程度、多少、
順応していく必要もあるのではないかと
感じた。

「あなたが、人と関わる能力に
欠けているのではなく、
もしかしたら、ここ何年間か
浦島太郎になっていたのではないかしら…」

彼女は、浦島太郎という言葉に
大きくうなずき、
少しホッとした様子だった。
そしてまず、自分のために、
女性雑誌を買って勉強してみると言って
帰っていった。

次回の彼女とのカウンセリングが
楽しみになってきた。
人は、いつからでも変われるから。

投稿者 椎名 あつ子 : 19:44

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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