2006年12月01日
赤い傘
「ぼくだけは
ぜったいにしなない
なぜならば
ぼくは
じぶんじしんだから」
新聞に出ていた詩。
作家、高史明さんの息子の詩。
私は、この息子さんの本を、
中学3年生のときに読んだ記憶がある。
「ぼくは12歳」
30年ほど前、
高さんのひとり息子は、
人知れず詩を書き溜めた。
手帳にこのことばを残し、
自死した。
「何故!」
という自問を繰り返しながらも、
高さんと奥さんは、
「ぼくは12歳」
を出版したということを新聞の記事で知り、
忘れていた記憶があふれ出した。
「ぼくは12歳」を手にした当時の私も、
いじめに苦しんでいたひとりの女の子だった。
中学時代の2年以上、
無視される孤独と闘っていた。
お弁当をクラスで食べられず、
学校の屋上で食べていた。
雨が降ると階段で食べた。
ある日、ある先生から、
”裁判”をみんなの前でされて、
たくさんの私への攻撃のことばを聞いた。
ボロボロに泣き崩れた自分の顔が、
どんなに醜いのだろうかと思った。
その日、はじめて死のうと思った。
雨の中、とぼとぼと、
ぼーっとしながら歩いていたら、
他のクラスの女の子が
赤い傘をさしかけてくれて、
家までだまって送ってくれた。
その日、赤い傘の子に
救われたと思えた。
私はあの日、
とにかく生きてみようと思った。
遠い遠い記憶は、
今でも私の中に残っている。
でもそれは、
いじめられていた憎しみでも恨みでもなく、
悲しみでもなく、
孤独感でもなく、
赤い傘の女の子だけが
鮮明にこの心の中にいる。
あの日から何十年もが経ち、
私はカウンセラーとして、
先日、いじめの問題の講演をした。
不思議な感覚にとらわれながらも、
赤い傘を、ずっと思い出していた。
赤い傘のあの子は、
もしかして、イエス・キリストだったのかも
と思う。
今、この時にも、
死のうとしている君たち。
どこかに必ず、私の時のように、
傘をさしかけてくれる人はいるよ。
ただ、回りの子は、
傘のさしかけ方が分からないんだよ、きっと。
だから、大声で、
誰かに訴えてみようよ。
「苦しいよー!」
って。
まず、伝えてみようよ。
だって、君たちは、
本当は死にたいんじゃないんだもの。
消えたいと思っているだけだよ。
消えたいことと、
死にたいことは、
違うということ。
もう一度、考えてみて。
これは、何十年か前、
死ななかった私からの、
心からの切なるメッセージ。
もう一度
もう一度
生きようよ。
投稿者 椎名 あつ子 : 12:00
プロフィール
2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。
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