2006年08月10日

畠山容疑者を思う

「秋田連続児童殺害捜査終了」
と、朝日新聞町管の記事を読むうちに、
再び心がきしむ思いでした。
畠山容疑者の、悲劇の母を演じている姿、
身勝手な怒りの矛先の向け方、
そして、畠山容疑者の
自分の中での虚構の姿…
私は、この記事を大事件として
受け止めることができず、
日常的なこととして読んでいる自分に
ハッと我に返りました。

私が毎日カウンセリングをしている中で、
彼女のように、離婚後、
生活保護を受けながらもひとりで子どもを育て、
仕事も見つからず、親からも見捨てられ、
路頭に迷いながら泣き崩れて
ここに来る若い母親たちは、
現に存在しているのです。
離婚した原因をすべて
「あなたが選んだんでしょ」と
本人のせいにされながら、
(実は元夫にも、借金やアル中、DVなどの
問題がある場合が多いのです。)
経済的に苦しみ、
他の同年代の友達にも差別をされ、
また仕事では、子どもがいるために
残業ができにくいことで、
クビになるケースも多いのです。
区役所や地域の団体に、
母子の居場所について探してもらうことについて
連絡しても、そういった場所は本当に
無いに等しい状態です。

私のところに来る女性たちは、
社会から見放され、親からも見放され、
友人からも見放された中、
人を信じること、感謝すること、愛すること、
そういったことが欠落し始めます。

それでも何かにしがみつきたくて、
残りわずかなお金を握り締めて、
ここにカウンセリングを受けに来ます。
若く、まだ無邪気さが残っている彼女たちが
絶望した最後、
畠山容疑者のようなことを
起こさないでいられるために、
何を私たちはすべきなのか考えます。

起こした結果だけでなく、
起こす前の彼女達の苦悩と混乱と絶望を
知ろうとすること、気付こうとすること、
そういった思いやりや共感の気持ちを
私たち女性は持ちたいと思います。
違った世界の狂った人として見るのではなくて、
人は悲しみのあまり
壊れてしまうのであるということを、
理解しようと思います。

人を信じること、
ありがとうと言うこと、
人のために何かしようとすること、
子どもを抱きしめること、
ごめんなさいと言うこと…

本当はみんなが小さい時から
大人になるまでの間に、
教育されていることであるはずなのに、
何かのきっかけですべてが
ポロポロと落ちてしまい、
その人には不信、恨み、嫉妬、怒り、諦めしか
残っていなくなります。

そういった人が、もしあなたの側にいたのなら、
勇気をもって一度、優しく声を掛けてみませんか。

「大丈夫?」ひと言だけでも。

投稿者 椎名 あつ子 : 16:30

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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