2008年02月アーカイブ
2008年02月29日
ママの愛
母を愛せない人たち。
彼女たちは、
自分の母親からの愛を
感じられずに生きてきた。
小さいとき、ピアノの練習を強制され、
間違えたことで何度も手を叩かれた。
また、ある子は、弟、妹が
母のひざにのっていることで、
自分には母のひざはないものとあきらめた。
母は、彼女をひざにのせる余裕はなかった。
何故なら、お姉ちゃんだから。
また、ある人は、やっとの思いで
いじめられていることを
打ち明けたのに、
「でも、学校だけは行きなさい。」
と言われて、
6年間、小さくなって生きてきた。
母親にももう、打ち明けることをあきらめて。
彼女たちは、大人になって、
はじめて生きづらさを訴える。
彼女たちは、甘えたり頼ることは
いけないことと考え、
マイナスの自分の感情を抑え込む。
そしてまた、人を心から
信じることを拒む。
いつか、自分が裏切られる恐怖を、
最初から、自分から防御して
生きていくしかないから。
それは、彼女たちが育ってきた中で、
気付き、感じて、
自然に身についてしまったこと。
それなのに、そのことで、
彼女たちは苦しみ、悩み、
自分を責める。
彼女たちは、彼女たちが小さかった
あの頃の母を、少しずつ知る。
知るうちに、感じる。
(愛せない。どうしても。)
そういった、あきらめに似た感情で、
彼女たちは、母親を今、
少しずつ彼女たちのやり方で
愛し始める。
それは、あきらめ、求めることをやめた、
悲しい想い。
(もう一度、私を抱きしめてよ。)
この想いを、心にうーんと秘めて。
私の、悲しくもやさしいなクライアントたち。
私はやはり、この人たちを見捨てられない。
だって、好きだから。
2008年02月27日
精霊
その子は舞台の真ん中に立っていた。
水色のやさしい布をまとった
精霊の女の子。
ふつうの人には見えないけれど、
限られた能力を
持った人だけに見えるという
不思議な役。
彼女は、大学受験という
辛い時間の中で、
1年間、怒鳴られながらの
過酷な歌や踊りの
トレーニングを耐え続け、
やっとの思いでたどり着いた
初舞台。
細く小さな体からは
想像もつかないほどの、
熱いエネルギーを出しながら、
大きな瞳は、
まっすぐと前を見つめていた。
あなたは乗り越えたのです。
大きな大きなハードルを。
舞台を観終わって、
みんなが拍手をしているとき、
何故か、大きな達成感を
一緒に味わせてもらえた気がした。
美しい精霊のように成長した彼女は、
きっと何年後かには女神のように
なっていくのだろうと思った。
果てしない彼女の、
これからの能力を壊すことなく、
大切に見守り続けたい。
この日の夜のワインは、
最高の味だった。
2008年02月25日
羽根
あるクライアントが、
ここセンターを卒業した。
彼女との4年間の歴史を、
最後の日、振り返った。
うつになって、病院に通いながら、
カウンセリングでは
心の中を話し合ってきた。
その間、職場復帰の挫折も
繰り返してきたが、
授産施設でのトレーニングにも通い、
やっと職場に戻り、
3ヶ月が過ぎた。
心の安定が戻り、
最近は、いつも明るい姿で、
いきいきとし始めていた。
背中に白い羽根が
大きくはえてきているのが
見えた日だった。
「卒業にしようか」
私の提案に、彼女は、
大きくのけぞり、
嬉しそうに、
「やったー!」
と叫んだ。
長い長い月日を、一度もあきらめず、
通い続けた彼女の忍耐力を、
改めて賛美したい気持ちだった。
その日、彼女は、
ここから羽ばたいていった。
数日後、素敵なプリザーブドフラワーとともに、
メッセージが届いた。
ここへ通う人たちへ
託してくれたことばだった。
「みなさま
これからも、たくさんのみなさんが
羽根をもらえますように。」
ステキなことば。
誰もが背中に、羽根は持っているけれど、
その羽根が傷付いて、
飛べなくなっただけ。
その傷が癒えたとき、
元のようにまた、飛び立てることを
みんなに知ってほしい。
あきらめないで。
ここは、羽根を修理するところです。
2008年02月22日
あの子
15歳のあの子のことを
ずっと考えていた。
何故、あの子はあんなに冷静に
自分の心と向き合おうとするのか。
そして何故、あの子はあんなにも、
時に一人になりがたるのか。
そして何故、あんなにも冷めた瞳で
人を見るのか。
優しすぎるあの子は、
自分がこれ以上傷付くことを
いちばん怖れ、
早く大人になろうと
しているのかもしれない。
たくさんの優しさと、
たくさんの賛美と、
そしてたくさんの信頼を、
両手一杯、もっともっと抱えたいのに、
それを誰にも言えない状態の中で、
彼女の心が、知らない間に少しずつ
凍っていってしまっているとしたら…
彼女の大きな美しすぎる瞳の奥の
小さなしずくを、
私は、もっともっと知りたいと願う。
そう、決してあなたは一人ではないから。
あなたを生んだあなたのママは、
あなたが神様から与えられた
大切な宝物であることを、
ちゃんと知っているから。
美しい瞳の奥のしずくを、
流していいのだということを、
あの子に知ってほしいと、
私は祈りながら、見守っている。
2008年02月20日
19歳
一人の女の子が、
19歳の誕生日を迎えた。
子どもでもない、大人でもない、
19歳という年は、
中途半端に苦しいときなのかもしれない。
私は、19歳のとき、
今まで親の管理下に生きてきた
温室のような、
またある意味、大げさだけれど、
牢獄のような世界から、
突然、飛び出した。
私は、最悪のやり方で、
両親を裏切った。
彼らたちは混乱し、
泣き続け、
そして諦め、
心配し、
茫然とした。
私にとって、あの時、
革命を起こしたのだろうと、
今は思う。
バカげたやり方のクーデター。
19歳になった彼女は、
あの時の私とは違い、
キラキラとしていて、
太陽の光に照らされている、
波の表面の輝きに似ている。
1年前、うつになってしまい、
いつも泣いていたあの子は
もうどこにもいない。
次に会うとき、
私は彼女のかわいい巻き毛を、
そっと撫でたいなと思っている。
19歳、おめでとう!
プロフィール
2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。
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