2006年09月27日

トゥーランドット姫

オペラを観に行きました。
子供の頃に連れて行ってもらって以来で、
大人になってからは、初めてでした。

マリアカラスのオペラは好きで、
車の中ではよく聴いていましたが、
やはり行って観るのは、
あたり前ですが、優雅な気分に浸れます。
オーケストラの雄大な響きや、
夢のある舞台装置、
そして、来ている人たちの
オシャレな服装などを見ているだけで、
久しぶりにすてきな緊張感でした。

今回は、フィレンツェ歌劇の
「トゥーランドット」を、
NHKホールで観たのですが、
実はトゥーランドット姫役のオペラ歌手の
アレッサンドラ・マークさんが、突然の病気のため、
車椅子で舞台に出てきました。

この舞台を、この日に、
こういった形で行なうまでの、
関係者の人たちの苦労、
そして、車椅子のままで主役を演じている
アレッサンドラ・マークさんの勇気、信念、
そして高い金額を払って期待して来ている
お客様たちからのプレッシャーが、
どんなものかを想像すると、
計り知れない思いがあったのだと思います。

彼女は、氷のように冷酷な
トゥーランドット姫の心が溶けていく様子を、
堂々と歌い上げていました。
車椅子のままで、あれ程の美しい声が
響きわたるということは、
本当に奇跡のようなことであり、
私は、オペラの内容に感動するまでもなく、
この歌手の生き方に、心を打たれ、
あふれ出す涙が止まりませんでした。

立つことのできない状態で、
両手を大きく広げ、上半身全体で表現しきった
彼女の激しいオペラへの情熱は、
まさに、
「愛の勝利を歌い上げることが
 オペラの核心であり、
 目的である」
とプッチーニが言っているとおりのことでした。

彼女は、愛を表現しつつ、
自分の勝利を歌い上げているかのようでした。

私はこの日、胸の高ぶりを静めることができずに、
帰ってから、赤ワイン1本を飲み干しました。

真実の愛のために、
そしてアレッサンドラ・マークさんの
勇気をたたえながら。

投稿者 椎名 あつ子 : 11:32

プロフィール

横浜心理ケアセンター

『横浜心理ケアセンター』

2000年から横浜市中区で開設しているカウンセリングルームです。
多種医療・弁護士などとの協力体制のもと、心理カウンセリングを行っています。
このブログでは、センターの代表である私が、一人の人間として、一人の女性として、またカウンセラーとして、日々の生活の中で感じた様々な出来事などをエッセイ風にみなさんにお伝えしていきたいと思います。

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