マイウェイ 女性カウンセラーのプチ・エッセイ

夜中にテレビをつけたら、
壮大な山がポーンと、画面に現れました。
それは白馬岳の映像でした。

そこは日本で最も変化に富んでいて、
お花畑がある山だそうです。
山の中の小さな花々が紹介されていました。

氷河期から生き延びているざくざくとした岩に、
しっかりと根を張っている花、コマクサ。
寄り添うことで寒さから逃れることを知っている
黄色い小さな花、イワベンケイ。
その他にも、ダイモンジゾウ、イワオトギリソウ…etc

私は、山登りをした経験がないため、
こういった、けなげに咲く小さな花を、
美しいとは思えても、どこか遠い存在で、
ただなんとなくテレビを見ていました。

そうしているうちに、
子どもの頃、丹沢に登ったこと、
そこには父と母がいて、子どもの私がいて、
新しい登山靴を買ってもらい、
初めて山登りをしたこと、
小学校低学年だったこと…
そんな途切れがちな記憶の中の確かな感覚は、
あの頃は時間がゆっくりと過ぎていたことなどを
思い出したのでした。

あれから信じられないほどの月日が経っていて、
そして父も母も年をとり、
私もそれなりに大人になっていること。
こんなことを感じた私は、
少しだけメランコリックになりました。

もう一度だけでいいから、
子どもになってみたいなと思ったのでした。
何故なのか、不思議でした。
もう一度、背中やおしりを押してもらって、
あの頃のように山を登りたいのかもしれません。

山登りは、私にとって遠い記憶のように、
遠い存在のままでした。
いつか私が山に登りたいと思える日は、
私の背中を押してくれる人が
できたときのようです。
山に登れる日を待ちたいと思います。